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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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飲み会

 拓斗と川崎が2人きりで飲みに行くということも知らず、雫はいつも通り仕事を終え、清子の分の晩御飯の買い物を済ませ、清子の家まで届けた。

「え?拓斗飲み会なんか?」

「はい。昨日、会社で仕事をミスして元気なくしちゃったみたいで、心配したみなさんが元気付けに誘ってくれたみたいなんです」

「へえ~なんやかんや言って拓斗はどんくさいからな~」

「家でも元気なさそうでしたから・・・心配です」

「まぁ、大丈夫や。いつまでも引きずる子やないし。それよか、雫ちゃん大丈夫か?」

 清子に背を向け、キッチンで晩御飯の支度をしている雫が振り向かずに答える。

「私は大丈夫ですから」

「拓斗がおらんのやったら、雫ちゃんここに泊まればええねん」

「ありがとうございます。でも、タク、何時になるかわからないけど帰ってくるだろうし、帰ったらお茶漬け食べれるようにしておいて、って言われてますし」

「そうかぁ・・・いつ帰るかわからんのやったらここで待っててもええんやで」

「ありがとうございます。でも、帰って待つことにします」

「わかった。オカン枕元に携帯置いておくからなんかあったら連絡しといでな、夜中でも」

「はい。ありがとうございます。出来ました。後であっためて食べて下さいね」

美味しそうな酢のにおいがほんのりと香ってくる。昨日の夏野菜の残りを使って、今日は酢豚を作ってくれたようだ。

「冷蔵庫にジャージャー麺も入れておきますね。じゃあ、また明日来ますね」

「おおきにな。雫ちゃんの晩御飯はどないするんや?」

「私は今日は一人なので・・・ほら、お母さんのを作るついでに、ここに」

と、酢豚の入った保存容器を清子に見せた。

「さすが雫ちゃんやな。ほな、気をつけて帰ってな。また明日待ってるわ」

「はい」

そうして雫は清子の家を出て、帰って行った。






 木原家に帰る雫の姿を井上は今日も影から見ていた。今、後を付けて雫の部屋に押し入っても、木原拓斗は今夜は家に帰らないこともわかっている。が、まだ夕方で外は明るい。行動を起こすには人目が気になる。どうせ、今夜はチャンスが山ほどあるんだ。後の楽しみに取っておこう・・・雫がマンションに入る姿を確認して、井上はその場を立ち去った。






定時の時間になり、拓斗はいそいそと帰り支度を始めた。そうだ、行く前に雫に連絡だけしとこう。拓斗は雫にメッセージを送った。

”仕事終わったから 今から飲み会行ってくる 戸締りしっかりな!”


 すぐに雫から返事がくる。


”お疲れさま! 楽しんで来てね。いつでもお茶漬け食べれるようにして待ってる”



 どこで飲むのかはまだ知らないが、多分居酒屋とかだろう。こういう日は、帰ったらあっさりとしたお茶漬け食べて寝るのが一番だ。



「木原君、行こっ」

 いつの間にか、川崎先輩がデスクの横に立っていた。

「はい。駅前ですか?」

「いいから~ついてきて!」

俺と川崎先輩は会社を出て、歩き出した。






「また穴場的な・・・」

先輩に連れられて入ったお店は、隠れ家的な洋風居酒屋だった。店内は薄暗く、落ち着けそうないい雰囲気で、お洒落なイメージだが、カウンター以外の席は各席目隠しのように座ってる人が見えないように配慮している。見たところ、お座敷みたいな大人数で座れる部屋はなく、1~2人でしか飲めないんじゃないのか?というような店だった。

「カップル喫茶みたいでしょ」

「えっ・・・それってなんか聞いたことある・・・いやらしいことしたりするやばいお店ですか?」

「ここは普通の飲み屋さんよ。静かにお酒を楽しみたい人や、カップルで仲良く飲みたい人のための居酒屋なのよ」

「なんだ~びっくりした・・・」

「なぁに?そういうことしたいわけ?」

「い、いえ!そんなんじゃないです!」

慌てる拓斗に、川崎が悪戯っぽく笑いかける。

「ここのね、おすすめのカクテルが美味しいのよ。どうする?最初は生でいい?」

「そうですね。乾杯の後、そのカクテルも飲んじゃおうかな」

 しばらくして、生ビール2杯とおつまみが運ばれてきた。

「料理も私のセレクトでいい?じゃあ、まずは乾杯~」

「はい。お疲れさまです~」

拓斗と川崎のジョッキが音を鳴らして触れる。

「んまーっ!やっぱ仕事終わった後のビールいいですね!」

「でしょ。ここは料理も美味しいのよ。楽しみにしてて」

「はいっ先輩はいいお店をよく知ってますよね」

「あの定食屋さんのことかしら。独身だし、暇だし、結構あちこち出歩いてるから発見も多いのよ」

「なるほど・・・先輩、あ、そっか。結婚はまだでしたね。彼氏はいないんですか?」

「彼氏・・・今、目の前にいるけど」

「えっ??俺??なんでやね~んっ!のっけから飛ばしますね!」

「うふふ。だって嬉しいんだもの。さぁ、飲もう~!乾杯っ」

「えっまた乾杯するんですか~」

そんなことを言いながら、拓斗は川崎と楽しく飲み始めたのだった。



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