天界Q&A
シルクの隣に腰掛けた拓斗は質問を始めた。
Q1「天界ってどんなとこ?」
A1「ものすごく広い雲の絨毯。そこに天使たちが大きな鏡を持って過ごしてるの」
Q2「シルクは俺のパートナーって言ったけど、同い年なんやろ?同じ日にどうやって生まれたん?」
A2「下界で赤ちゃんが産まれると、同じ時刻に天界でもパッと赤ちゃんが生まれるの。魔法みたいに」
Q3「じゃあ、生まれてすぐはシルクも赤ん坊やろ?鏡を渡されても困るんちゃうん?」
A3「私たち天使は、姿は赤ちゃんでもすでに大人の能力を備えているから大丈夫よ」
Q4「ぐっ・・・頭良さそうやな。俺を助けてくれたことあるん?」
A4「今まで2回ぐらいあるよ。3歳の頃、プールで溺れかけた時と、16歳の頃、駅の階段から落ちそうになった時。覚えてないかな」
そういえば、高校に入ってから駅の階段の一番上で足を踏み外したけど、後ろの人に押されて大丈夫だったことがあったな。振り返ったら誰もいなくて「あれ?」て思ったんだった。あの時か。
プールで溺れかけたことは小さすぎてよく覚えてないや。
Q5「パートナーに姿見せたらあかんのに、なんで俺の前に現れたん?」
A5「・・・それは・・・」
一瞬、シルクの顔が困惑した表情になった。けれど、答えなければいけないと思ったらしく、
一呼吸置いた後、再び表情が穏やかになり、そして静かに答えた。
「それは、タクのことを見守っているうちに、タクのことを好きになってしまったから・・・」
まじか!?こんな可愛い子に惚れられる俺って・・・
拓斗はまじまじとシルクを見つめる。顔はもちろん可愛いが、その上、透き通るような白い肌、
立派で綺麗な羽・・・は、まぁ置いといて、白いドレスから見える、すらりと伸びた細い脚。
天使も人間と同じ体の造りなんかな・・・ドレス脱いだらどうなってるんやろ・・・
「タク!変なこと考えないでよ」
シルクの声にドキッとする。そうや、バレてるんやった。
「まぁまぁ、素朴な疑問やん。ごめんごめん」
それにしても、こんな可愛い天使が俺のことを好きになってくれるなんて。
Q6「パートナーに姿を見せたらどうなるん?」
A6「普通なら一切姿を見せないだろうけど・・・見せてしまった場合は、事情を説明してパートナーが納得してくれなかったら、消される」
消される???殺されてしまうのか???
「生まれる時もパッと生まれるんだもの。消そうと思えば天界の王女の意思で簡単に出来るわ。もし私が消されると、もうタクのことを守れなくなってしまうけど」
「俺は、シルクの話を信じるし、シルクの存在を認めてるから・・・シルクは消されずに済む?」
「うん。タクはきっと私を受け入れてくれるとわかっていたから・・・だから来たの」
「そっか、よかった!じゃあ何も心配ないやん!これからも俺をずっと見ていてくれるんやろ?」
Q7「あ、そういえば、19歳がどうとか、20歳がどうとか、って何なん?」
A7「そう、その説明もしないと。実は私、20歳を迎える時に天界の王位継承の手続きをするの」
んんん?王位継承?俺のパートナーであるシルクが王女になるんか?
Q8「王女になるってこと?それでも変わらずに俺を守ってくれるん?」
A8「王位継承の手続きをしても、実際に王女になるのはタクが一生を終えた後なの」
王位継承をしない、一般の天使は、自分のパートナーが一生を終える時、同じ時刻に天界からパッと消えるの。生まれた時と同じ。自分のパートナーと共に生死を迎える。
けれど、王女になった天使は、自分のパートナーの死後、次の継承者が現れるまで何十年、もしくは何百年もずっと王女として天界にいなくてはならない。
「私は・・・タクがいなくなった世界のあと、ずっと存在していかなければいけないなんて、嫌だったの・・・」
Q9「そもそも、なんでシルクが王女になるって決まったわけ?」
A9「私の背中を見て。羽の付け根のところ」
そういうと、シルクは拓斗に背中を見せるように体をひねった。
「ん?赤いバラ?」
シルクの羽の付け根の間に、赤いバラのように見えるアザのようなものがあった。
「そう。このアザが次の継承者の証なの。生まれた時からあったわ」
なるほど。避けられない運命なんだな・・・。
Q10「王位継承はどうしてもしないとだめなん?」
A10「・・・一つ、避けられる方法があるらしい。今までに例がなくて本当にうまくいくかもわからないんだけど」
シルクが王位を継ぎたくないなら、俺も出来るだけ力になりたいと思った。
今までずっと俺を守ってくれてたんやし、こんな可愛い子に悲しい思いをさせたくないし。
「その方法って?俺に出来ることあったら言うてや」
シルクは深呼吸をした。
「その方法は、私が人間になればいいみたい」
天使が人間になる!?そんな方法があるのか?
「人間になる方法は、今は言えない。もう少し、タクと一緒にいて、それから話すわ」
「わかった」