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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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昼の疑惑

 この日、那須は拓斗の会社に向かっていた。今までも何回か、昼休みに拓斗のいるフロアまでお邪魔しているのだ。あいつは、いつも雫ちゃんの作った愛妻弁当を食べるために、デスクではなく、フロアの端の休憩スペースで食べているのを知っている。前もって連絡すると、何か話があると思われてしまうからと思ってあえて何も言わずに那須は訪れたのだった。




「よし、ちょうどええ時間に着いたな」

 会社まであと10メートル、というところまでやってきた那須。拓斗の会社から昼食を外で食べる人の群れが続々と出てくる。

「お、美人」

 ショートヘアのかっこいい感じの女性が出て来たのが目に留まる。拓斗の会社にあんな美人がいるんか。と、思っていたら

「・・・拓斗?」

 その美人の後を追うように拓斗が出てきたのだ。なんでやねん、お前どこ行くねん。那須はすぐに追っかけて行って声をかけようと思ったが、会社から出てきた団体はそれぞれのグループに分かれて歩き出していて、拓斗はその美人とたった2人きりだということに気付いた。那須にはもう何が何だかわからなくなった。昼休みやろ?雫ちゃんの作った弁当食べる時間と違うんか?なんでその美人と2人きりやねん。

 那須は尾行は得意じゃないけど、とりあえず2人の後をそっと付いて行ったのだった。





 拓斗と美人は小さな定食屋に入って行った。ここでお昼ご飯食べるんか・・・?雫ちゃん、今日は寝坊でもしてお弁当作れんかったんかな。そやな、きっとそうやな。と、那須はそう思って帰ろうとしたが、親しげに話す、拓斗と美人が気になってしょうがない。どうしようか。今、中に入ると危険やろか。堂々と声をかけれるような雰囲気がしないから、どうしても那須も身を潜めてしまう。定食屋の外から中を伺うと、拓斗たちが一番奥の席に着くのが見えた。レジの場所も確認する。よし、あそこに座っていたら中に入ってカウンターにでも座れば見えない・・・かな。もし、向こうが気付いて声をかけてきたら知らん顔で「あれ???拓斗やん!」とか言ってやればいい。そう決心して、那須は定食屋に入った。

「いらっしゃいませ~!」

 店のオヤジが大きな声を出す。那須はとっさにおかずを選ぶふりをして少しかがんで拓斗たちから見えないようにする。定食を頼めば声を出すので見つかるかも・・・那須は小鉢などの取るだけのおかずをチョイスして、レジで会計を済ませ食べ始めた。カウンター席から少し背を伸ばすようにすれば、拓斗たちの姿が何とか見える。那須は食べているふりをしながら、2人の様子を伺ってみた。

『ん?』

 拓斗が食べているのは定食のようだが、美人の食べているのは、どう見ても弁当箱に入った弁当のようだ。しかも、あのお弁当箱は・・・拓斗の物だと那須にはすぐわかった。何回か見たことある、青のチェック柄のお弁当箱。そのお弁当を美人が食べているのだ。なんでや・・・雫ちゃんの作った弁当を他の女に食わすとか・・・ありえへんやろ・・・。




 那須は、さっさと食べ終えて、拓斗の会社の前で拓斗を待つことにした。フロアまで行ったけど拓斗がいなかったことにして、話をするつもりだった。

 モヤモヤした気分のまま、拓斗と美人が戻ってくるのを待った。すると、

「あれ???ナス???」

と、拓斗が声をかけてきた。

「よぉ、来たのに拓斗いなかったから待ってた~」

と、明るく言ってみた。

「いつ来たん?」

と、聞かれたから

「ああ、ついさっきやで」

と、答えてみた。すると、

「ああ、弁当食ってからちょっと先輩とコーヒー飲みに外出てた」

と、拓斗が嘘をついたのだった。

「木原君の知り合い?初めまして。川崎といいます」

 ショートヘアの美人が、挨拶をしてきた。

「どうも。拓斗の同級生です。・・・ちょっと時間ええか?」

「ああ、5分ぐらいしかないけど」

「じゃあちょっとここで立ち話でええわ・・・」

と、ちらっと川崎さんの方を那須が見た。

「あ、私は外すわね。木原君、荷物持ってくれてありがとう」

と、拓斗の持つ手提げをさっと奪って会社の中へ入っていった。きっと、あの中にお弁当箱を入れているのを見られると困ると思ったからだろう。自分の荷物だったふりをするなんて、なんか計算高く感じるな。





「なんか話があって来たんか?」

 拓斗が那須に聞いてくる。

「いやいや、たまたま近くまで来たから寄っただけやねんけどな。新婚さんの話でも聞いて、俺らの結婚の参考にしよ~って思ってな」

 那須は口から出まかせで並べてみたが、拓斗が食いついてきた。

「え??お前らもついに結婚か??」

「まぁ、ぼちぼち考えてるねん」

「そんな大事な話やったら立ち話で終わらんやん。近いうちにうちにでも来いや」

「そやな。そうさせてもらうわ」

「ほな、もう昼休みも終わるし、またな!ナス」

「おう。また連絡するわ」

 こうして、那須は拓斗の会社を後にした。会社を出て定食屋に行く前に声をかけた方が良かったのだろうか。あいつは、こうやって度々雫ちゃんの作った弁当を他の人に食べさせたりしてるんやろか。一体何のために?川崎さんという美人の先輩と2人きりで過ごすため、か・・・?どういうことや・・・近いうちに木原家に行かせてもらうか。拓斗と雫ちゃんの様子を見たら何かわかるかも知れない。なんだか信じられないが、聞いたところで本当のことを聞けそうにないから探るしかないだろう。那須はそんなことを考えていたのだった。

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