天界から来た少女
シルクに言われるまま、とりあえず家に帰ることにした拓斗。
自分の部屋で、シルクの話をじっくり聞くつもりだったが、拓斗はふと気付いた。
そうや!家にこんな金髪少女連れて帰ったらまずいんちゃうか!
特にオカン!絶対なんか言うてくるわ!
心の中で思ったことだったが、シルクが答える。
「大丈夫よ、タク。私の姿はタクにしか見えない」
「ええ?そうなん?って、今、俺、心の中で思っただけやのになんでわかるん?」
「私にはタクの思ってることまで全部わかるから」
「ええっ?なんやそれ」
シルクは穏やかな笑みを浮かべながら言う。
「とにかく、タクの部屋に行きましょ」
そして、家に着いた。
拓斗は今までにない緊張感に襲われていた。
自分の家なのに、ドキドキする。
シルクは俺にしか姿が見えないと言っていたが果たして本当なのか。
「大丈夫だから、入ろ」
躊躇している拓斗の背後からシルクの声が聞こえる。
「うん」
拓斗は玄関のドアを開けた。
「・・・ただいま~」
キッチンから拓斗の母親が顔を覗かせる。
「おかえり。遅かったやん」
「あー、ちょっとな」
そそくさと靴を脱ぎ、階段を上がろうとする拓斗。
「ご飯は?」
「ん~後でいいわ。今お腹空いてへんし」
とにかく、今はシルクの話を聞くのが先だ。
「あ!ちょっと拓斗!」
母親に呼び止められてビクッとする拓斗。
やっぱりオカンにも見えてるんや!
「那須くんから何度も電話あったわよ。携帯も繋がらへん、って。なんかあったん?」
「なんや、そっちか。別になんもないわ」
「そっちかって?他になんかあるん???」
ヤバッ、口を滑らしてしもた・・・
「別になんもないわ。とりあえずメシ後で食うから!」
拓斗はシルクの手を引っ張り、階段を駆け上がった。
シルクを部屋に押し込んで、慌てて鍵を閉める。
誰にも姿は見えないとはいえ、邪魔が入らないようにしたかったからだ。
「なにから話そうかな」
シルクは拓斗のベッドにふわりと腰をかけ、拓斗をまっすぐに見つめた。
その青く澄んだ瞳に吸い込まれるように、拓斗はシルクの目の前に座り込んだ。
そして、シルクは静かに話し出した。
難しい説明は苦手なタクだから、大まかに説明するね。
あとで質問を受けるから、とりあえず私の話を聞いて頂戴。
私の名前はシルク。天界からタクに会うためにきた天使なの。
私たち、天界の天使は、生まれながらにパートナーが決まっているの。
私のパートナーは、タク、あなたよ。
下界で新しい命が誕生すると、天界でも新しい命が誕生する。
同時に生まれた者同士がパートナーとなり、天使は自分のパートナーである人間を
守るため、大きな鏡を渡されるの。
私の鏡には、いつもタクの姿が映っていたわ。タクの成長、行動、感情・・・全てを私は見守ってきた。時に、鏡の中に入り込んで下界へ降り、タクを助けたこともあったわ。
それと、私たち天使は、本当は自分のパートナーに自分の姿を見せてはいけないの。
私は・・・どうしてもタクに会いたくて、天界の掟を破ってしまった。
でもね、今しかないと思ったの。もう私たち19歳なんだもの。
来月には20歳になる。決断するには、今しかなかったの。
ここまで話すとシルクは話すのをやめた。
「なんとなくわかる?」
「う~ん」
「わからないことあったら聞いてみて」
「うん」
拓斗は、ベッドに腰掛けているシルクの隣に自分も腰掛けた。