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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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サプライズ結婚式

 拓斗は朝からドキドキしていた。今日は雫に内緒で準備していた結婚式の決行日なのだ。全て、親友のナスたちに任せているため、拓斗も詳しいことはわからないまま、この日を迎えていた。

 雫には、籍を入れる前に写真ぐらいは撮ろうな、と言い聞かせ、いつもよりしっかりめのメイクをしてもらっている。写真屋で、格安のレンタルドレスがあるから予算は気にするな、とも言っておいた。



「ほな、いこか」

「うん」

 俺と雫は家を出て、歩き出した。ナスに、雫の働く喫茶店に9時に来るように言われたのだ。会場など借りるよりも、ちょっと狭いけど喫茶店貸切りでパーティーすればええやん、てことになったようなのだ。喫茶店のマスターには、健二が交渉してくれたらしい。草野に頼んだドレスがどんな物になったのか、まだ知らないが、きっと雫に似合うことだろう。俺はとても楽しみにしていた。



 喫茶店に着くと、ナスと女の子が立っていた。

「おはよう、拓斗。雫ちゃん」

「あれ、那須君・・・あっ?」

 雫がナスの隣に立つ女の子に向かって声を上げた。俺もその子を見て、すぐにわかった。

「ああ!草野やな!久しぶりや!今日はおおきに、よろしく」

「木原君、久しぶり。雫さん、こないだはどうも」

「ん??知り合いか?」

「こないだ一回ここに食べに来たのよ」

「覚えてます。おすすめのランチは?て聞かれたので」

「そうやったんか」

「タク?今日はよろしくって何?今から写真撮りに行くんだよね?」

 雫がおかしな顔をして俺の方を見る。俺は素知らぬ顔をして「さぁ~」ととぼけた。

「えっ?なに?」

「中に入るとわかりますよ、さぁ、どうぞ」

 俺と雫は、喫茶店のドアを開けようとした。

「あっ、そっちじゃなく、こっちから!ついてきて!」

 喫茶店の2階部分は、オーナーの家になっていた。店の横に階段があって、そこから上に上がるように俺たちは案内された。




「雫さんはこっちの部屋。木原君はそっちの部屋で着替えて」

 草野に言われるまま、オーナーの家の部屋に入らせてもらう。俺が入った部屋には、健二がいて、壁にかけられてあるスーツを着るように言われたのだった。

「え、俺も着替えるんか」

「そらそうやろ。結婚式やし。雫ちゃんだけドレスってのも変やろが」

「まぁそうやけど、サイズは?」

「お前と俺、ほとんど変わらんやろ。俺が見立ててやったわ」

「そうか、おおきにな」

 その頃、雫の入った部屋でも京子と雫の会話が始まっていた。

「私、木原君や那須君の高校時代の同級生です」

「そうだったんですね」

「趣味でドレス作りしてて、雫さんに似合うドレスを頼まれたの」

「えっ」

「喫茶店に行ったのは雫さんのこと見た方がドレスが作りやすいと思ってなんです」

「ええっ・・・そうだったんですか」

 京子が雫に作ったドレスにかかっていた衣装カバーを外すと、純白のドレスが雫の目に飛び込んでくる。

「わぁ・・・綺麗・・・」

「きっと、似合いますよ。私が自信を持って作り上げたんですから」

「すごい・・・ありがとうございます」

「木原君に頼まれた【テーマ】に沿って作ったんですよ」

「テーマ?」

「このドレスのテーマです。着てみればわかりますよ、さあ」

 京子にうながされて、雫もドレスに着替えを始めた。




そして、新郎、新婦、会場、全ての準備が整った。俺は、雫より一足先に、会場へと足を運んだ。

「わっすっげー!」

 喫茶店の店内がすっかりパーティー会場になっている。客席にはオカンの姿もあった。単身赴任中のオヤジも駆けつけてきてくれていた。

『新婦の入場です』

 司会役のナスがマイクを持つふりをしながら、声を張り上げて言った。

喫茶店のドアが開き、新婦の父親役のマスターと共に現れた雫は・・・

「綺麗!」

「天使や!」

「花の妖精みたい!」

「おおおおおおおお」

 会場内がどよめくほどの美しさだった。俺が草野にお願いしたドレスのテーマは、ずばり【天使】だった。天使から人間になった雫を、天使の姿で想い出に残したかったのだ。




 俺の前に現れた雫は、純白のチューブトップでプリンセスラインの膝丈のドレスに、花の冠をかぶり、背中にはシフォンで作られたバラ模様の入った羽がつけられていた。草野の考えた、定番じゃない天使だった。花の妖精と天使の間ぐらいの柔らかくて可愛いイメージだ。

「雫・・・最高に綺麗や・・・」

 こうして、俺と雫は、いわゆる【人前式】で結婚式を無事に挙げた。みんなの前で愛を誓いあって指輪の交換したり、マスターが作ってくれたウエディングケーキに入刀したり。冠とお揃いの花で作られたブーケのブーケトスは、見事にナスの彼女がキャッチし、「次はお前らか~」と大盛り上がりだった。その後はみんなで料理を食べながら楽しい時間を過ごしたのだった。




「びっくりした・・・でも、とても幸せ」

「うん。みんなに感謝やな。俺ら、幸せ者や」

 夢のようなサプライズ結婚式が終わり、時刻はもう夕方5時を回っていた。俺と雫は、家に帰る前に、役所に寄って、無事に婚姻届けを提出した。

 これで、俺と雫は晴れて夫婦となったのだった。




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