表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
10/44

2人の秘密

 俺と雫の新しい生活が始まった。しばらくの間は、このまま実家で雫を住まわせてもらえることになったが、俺としてはいつまでも親に甘えるわけにはいかないので、少しでも早く家を出られるように、準備を始めた。

 俺は、大学に通いながら、バイトを増やした。今までは、週末だけしか入っていなかった居酒屋のバイトを平日も週3で入るようにした。雫も俺が大学に行って家を留守にしている時間帯だけ、あの喫茶店でバイトを始めた。

 二人で住むための物件を探してみたら、狭いながらも家賃3万前後で見つかりそうだった。俺と雫は二人で相談して、学生の間はそこで我慢して暮らして、俺が社会人になったらもっといい物件を探そう、と決めた。




 そんなある日のこと。

「あれ、雫ちゃんと違うんかな?」

 拓斗の母親、木原清子きはらきよこがパートの帰り道で、見かけた女の子。腰まで届く、長い黒髪の後姿が雫に似ている。雫らしき女の子は、本屋の中に消えて行った。清子も本屋を少し覗いて見た。

「やっぱり雫ちゃんや」

 雫は、キョロキョロと店内を見渡し、あるコーナーで足を止めた。

「なんか探してるん?あ、料理の本?」

 清子が近づいて、雫が見ている本を覗き込んだ。

「あ、タクのお母さん」

「雫ちゃん、料理とかしてみたいんや?」

 清子が訊ねると、雫は恥ずかしそうに顔を赤らめて

「はい。タクに私の作ったお料理を食べてもらいたくて」と言った。

 そんな雫が可愛らしいなぁ、と思った清子は、雫に提案した。

「そうやわ。雫ちゃん、今日から晩御飯作ってみる?」

「いいんですか?・・・でも私料理得意じゃないんですけど・・・」

「大丈夫や。教えてあげるから。そやけど、拓斗にはまだ秘密にしとこ」

「え?どういうことですか?」

「いずれ2人で暮らすことになるやろ。その時に雫ちゃんがご飯上手に作ったら、拓斗もびっくりしよるやろ。それが狙いや」

「わぁ、そういうの楽しみです」

「そやろ。じゃ、今日から秘密で特訓な。1冊ぐらいレシピも買っていこか」

「はい」

 雫と清子は二人で料理の本を選んで、一緒に家に帰った。




 そして、その日の晩御飯。バイトから帰った拓斗は食卓の上を見てビックリした。

「えっどしたん???こんなん見たことないわ」

 テーブルの上には、今まで一度も食卓に並ぶことのなかった、お洒落な料理が並んでいた。

「あれやがな、雫ちゃんが来てから、まともな料理してなかったな~なんて思ってな」

「へええ~そうなんや。オカンもこんな洒落た料理作れるねんな」

 食卓に並んだのは、いつものような揚げ物、煮物がメインの茶色一色の景色ではなかった。

「うまー!!どっかの店で食ってるみたいやな」

 拓斗がミートローフを口に運び、大袈裟に感動する。

「こっちのも美味しいよ」

 雫が取り分けて差し出してくれたのは、炙りホタテのカルパッチョだった。

「うお!なんやこれ!なんなん、今日めっちゃ豪華やん」

「今までな、家に男しかおらんかったからな、雫ちゃんのためにお洒落なんにしたんや」

「そうやったんか、でも、これがあってホッとするわ」

 拓斗は大根の味噌汁をすすった。

「せやろ。スープにしたろか思ったけど、そこまですると木原家の食卓やなくなるしな」

「まぁそうやな」

「一応味噌汁も味噌スープ言うぐらいやし、ええやろ」

 ガツガツと食べている拓斗は早くも完食しそうな勢いだった。男の子って食べるの早いんだなぁ・・・と、呆気にとられて拓斗を見ている雫。



「ごっそさん!毎日こんな豪華なんやったらびっくりするけど喜ぶなぁ・・・という期待(笑)」

「毎日こんな豪華なんやったら破産するがな・・・という予告(笑)」

「なんや、明日からはまたいつものご飯に戻るんかい!」

「まぁまた時々こんなんにしたるわ」

 雫は、拓斗と清子のやりとりを見て微笑んでいた。タクも大好き、お母さんも大好き。今日はお洒落なお料理を一緒に作ったけど、明日はいつものお母さんの手料理を教えてもらおう。タクがホッとするような味をいっぱい教わっていこう。



 こうして、この日以降、雫と清子の秘密の時間が増え、雫の料理のレパートリーもだんだんと増えていった。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ