表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しいていうなら(略  作者: たぴ岡New!
57/156

何でも知ってる海底のーんのQ&Aコーナー

九六、北国在住の名も無きエルフさん


 海底先生~


 子狸さんはもしかして頭が悪いの?

 


九七、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 おっと、ストレートに来ましたね

 なるほど、そう来ましたか……


 いいえ、そんなことはありませんよ


 いいですか?

 古来より、天才となんちゃらは紙一重であると言われます

 天才はぎりぎりセーフで、なんちゃらはぎりぎりアウトということですね

 これは見方を変えれば、ほとんど同じということ

 いっそ同じと言ってもいい筈

 

 つまり数学的に考えれば

 子狸さんは天才であるという解を導き出せるのです

 


九八、北国在住の名も無きエルフさん


 海底先生~


 子狸さんの物忘れが激しすぎるのは何でなの?



九九、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 ひとは過去を忘れることで生きていけるのです


 悲しい気持ち、苦しい気持ち、色々とありますよね

 そういったものを引きずらないよう、みんなの身体は出来ています


 進化の最先端を走る子狸さんは

 その能力が洗練されているのですよ

 

 過去を振り返って後悔するよりも

 明日を見据えて生きているのです


 みんなも子狸さんを見習いましょうね



一〇〇、西欧在住の名も無き竜人さん


 海底先生~


 子狸さんの趣味って何ですか?



一〇一、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 身体を動かすことが好きなようです


 珍しくスケジュールが空いたときなどは

 森の中をマラソンしていたり

 妖精さんと組み手をしていたりと

 余暇の過ごし方は日によって様々です



一〇二、北国在住の名も無きエルフさん


 海底先生~


 魔物たちは悪魔の生まれ変わりなんですか?



一〇三、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 なんのことかよくわかりませんが……

 仮にそうだったとしても、怖がることはありません


 親御さんが罪を犯したとしても

 そのお子さんを責めるのはお門違いというものです


 それと同じで、前世の行いが悪かったから何だと言うのでしょう?

 つまりおれたちの完全勝利ということですね

 ざまあ



一〇四、北国在住の名も無きエルフさん


 海底先生~


 お父さんとお母さんが、魔物たちは邪悪な生きものだって言ってました

 苦しんでいるひとたちを見て喜ぶなんて最低です!



一〇五、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 おい! もう答えが出てるじゃねーか!


 ですが、まあ……

 あのですね、ひと口に魔物と言っても個体差があるのですよ

 この僕、海底のーんは穏和な性格をしています


 ようは、一部の魔物が悪さを働くと

 他の魔物たちまで同一視されることがままあるのです

 決めつけるのはよくありませんよ


 ひとそれぞれです

 おれらっトコで言うと、王都のんとか大きいひとなんかは要注意ですね

 あのひとたちは生まれついての悪ですよ


 おれは違います



一〇六、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 おい。黙って見てれば好き勝手に言ってくれるじゃねーか……



一〇七、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 ちっ……


 なんだ、大ちゃん居たの?

 居るなら居るって言ってよ、も~っ


 ……


 帰って!

 ここはおれの聖域(ホーリーランド)なんだからっ

 誰にも渡さないんだからっ


 大ちゃんはいつもみたいに他の連中と罵り合ってれば満足なんでしょ!

 ここはそういうところじゃないんだっ

 帰って!



一〇八、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん(出張中


 ちやほやされていい気になってんじゃねーよ!

 お前、しまいには子狸さんに言いつけるぞ……



一〇九、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中

 

 すぐにそうやって子狸さんに言いつけるのはよくないと思います



一一〇、北国在住の名も無きエルフさん


 大ちゃん先生~


 先生の頭の輪っかには何の意味があるんですか?



一一一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 あ? 子ザラシどもが……


 んなの精霊どもに頼んで検索して貰えや

 いちいち答えてられっかよ。面倒くさい……



一一二、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 出たっ

 そういうトコよ、大ちゃん

 お前のそういうトコが子供たちに嫌われる最大の要因なんだっ!


 あのね、大きいひとの輪っかは

 元々は王都のんとお揃いなんだよ


 あのひと、いまでもたま~に出すけど

 むかしは銀冠の魔王とか呼ばれてたからね


 千年くらい前かな~

 龍脈を利用するか、埋めて潰すかで意見が割れてね

 そのときは、利用する派の王都のんが勝ったんだよ

 

 大きいひとは、最後まで抵抗していた潰す派だね

 このひとの輪っかは、王都のんとの共通点だよ

 考え方が似てるんだ


 だから対立する……



一一三、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 一緒にしないでくれませんか?

 あんな諸悪の根源みたいな青いのとおれは違うよ


 地下通路は潰しておくべきだった

 あんなものを残しておくから

 今になっておれらっトコの緑と木がギスギスするんだよ



一一四、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 ……土属性か



一一五、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 土属性ですよ



一一六、北国在住の名も無きエルフさん

  

 海底先生~


 土属性がどうかしたんですか?



一一七、海底洞窟在住の現実を生きる不定形生物さん


 あ~……


 うん、ちょっとね


 木のひとが氷属性担当みたいになっちゃったから、それで……うん……



 

 *



 一方その頃、はるばる南極まで訪ねてきてくれた緑のひとに、木のひとは湯のみを差し出した。


木「粗茶ですが」


 木のひとがにっこり。


緑「これはどうも」


 緑のひともにっこり。


 穏やかな空気が両者の間に流れるが、ひゅるりと吹いた冷たい風が容赦なくホットドリンクから情熱を奪い去った。


 冷たくなったお茶を、緑のひとはがぶりと飲み干した。


緑「生き返るようです。身体の芯から温まりますね」


木「地熱のことですか?」


緑「いいえ、地熱のことではありません」


 二人はお互いに仲良くしたいと思っている。

 せっかく再会できたのに、下らないことで喧嘩をするのは悲しいことだ。

 しかし仲良くしたいと願っているからこそ、ある種の話題に対して過敏にならざるを得なかった。


 ほっとひと息ついた緑のひとが、不意に真剣な眼差しを木のひとへと向けた。


緑「よく戻ってきてくれた」


 木のひとも真剣な表情になる。


木「ああ、すまない。苦労を掛けたな」


緑「気にするな。これからは五人で力を合わせてがんばろう」


木「任せてくれ。どっしりと根を下ろしていくよ」


 根を……。

 冗談で言っているのかどうかの区別がつかない。

 緑のひとは自制心を強く持ち、鈍感な振りをした。

 

緑「そうだな!」


木「……ああ!」


 絡みにくい。

 なんだ、この絡みにくさは。


 いや、わかっている。

 原因は土属性だ。


 木のひとは口には出さないが、真の土属性担当は自分なのではないかと思っている。

 しかしそれを言い出してしまうと、では氷属性は誰なのかという話になる。

 だから南極にお住まいの自分が氷属性を担当するのだ。植物の王さまなのに。


 一方、緑のひとは土属性に対してとくべつな思い入れなどない。

 だからと言って氷属性を引き受けるわけには行かなかった。

 緑のひとは火山にお住まいなのだ。


 火属性は喉から手が出るほど欲しいが、不動の赤いのが居る。空中回廊にお住まいの火のひとだ。

 身体が火で出来ているという徹底ぶりにぐうの音も出ない。

 その点、土属性はぎりぎりアリだ。かろうじてマグマとの関連性があるような気がする。


 しかし木のひとがどうしてもと言うなら……。


 緑のひとと木のひとは、にっこりと笑顔を交わした。


 土属性の話題にさえ触れなければ、二人の友情は永遠に続くだろう。


 永久凍土に雪解けの日が訪れはしないように。



 ~fin~



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ