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しいていうなら(略  作者: たぴ岡New!
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うっかり密通編

様々な国があり、様々な人間がいて、様々な魔法がある。

大きなミジンコみたいな人間がいても不思議ではないように、国によって妖精さんも様々だ。


昼下がりの陽気な午後。

夢に破れたぬいぐるみのような姿をした妖精たちが、森の中でひと時の団らんを楽しんでいた。

争いを好まない彼らは、草食動物みたいに群れを作り、たまに家族でお出掛けする。

遠目に見れば、小さな白くまたちが無邪気にじゃれ合っている。そんな光景だ。


妖精「…………」


その姿を、茂みの中からじっと見つめる人影が三つ。

羽のひとたちである。


彼女たちは無言でハンドサインを交わすと、まるで白くまさんたちの逃げ道を潰すように三方へと散った。


争いを好まない妖精たちは、常に平和的な解決手段を模索している。

だが、こうしてキャラがかぶっている以上、票が割れることは必然。

もはやどちらかが完全に滅びるまで決着はない。

ならば火花が散るような電撃戦こそがもっとも犠牲を少なくできる和平の道と言えるのではないか。


仲つむまじい様子でプロレスごっこに興じていた白くまさんたちが、はっとした。

団らんを引き裂くように、羽のひとたちが茂みを掻き分けて、ゆっくりと歩み寄ってくる。

慌てて逃げ道を探すが、すでに包囲されていた。


羽のひとが言った。


妖精「戦え……」


静かなる闘志が大気を揺さぶるかのようだ。


抱き合っておびえる白くまさんたちの目に輝線が走った。

世間一般では知られていないが、彼らは精霊の一種である。

精霊たちは遠く離れていても情報を共有することができた。


羽のひとたちがぴたりと足を止め、上空を見上げる。知らず、にぃっと口角が吊り上がる。


妖精「精霊王……!」


精霊たちには五人の王がいる。

その内の一人が、精霊たちの健やかなる暮らしと安全を保証する歌の精霊だ。

彼女は違反を取り締まる婦警のように羽のひとたちを指差して、口にくわえたホイッスルを吹き鳴らしながら降下してくる。

見目麗しい少女の姿をしているが、その正体は生き別れになった王都のひとの双子の妹である。


王都妹「ハイハイ、そこの妖精さんたち(物理)!ウチの子たちをいじめるのはやめなさい!とっとと散る!」


基本的に精霊たちは言葉を持たないが、歌を司る彼女は例外だった。


うんざりした様子で解散を命じる王都シスターに、羽のひとたちは好戦的な笑みをいっそう深めた。


妖精「いいだろう。そこの家族連れは見逃してやる。わたしたちも好きで争っているわけではないからな」


妖精「しかし、わたしたちにも立場というものがある。手ぶらで帰るわけにはいかん」


妖精「では、いったい誰が代わりを務めてくれるのか。そこが問題だ……わかるな?」


王都妹「なんなの、も〜!おかしいよ、このひとたち!」


頭を抱えてうなる王都シスターに、羽のひとは小さな人差し指を突きつけた。くるりと手首を返し、チョイと指を折り曲げる。


妖精「本気で来い」


本気でぶつかり合って、はじめて生まれる友情もある。

それは羽のひとたちなりの、友達になりたいという意思表示だったのかもしれない……。



✳︎



魔物と精霊は仲が悪い。

とくに魔物たちの対抗意識は並々ならぬものがあり、ライバルの絶滅こそが自分たちの地位を確固たるものにしてくれると強く信じていた。


しかし中には例外もいる。


こっそりと精霊たちと連絡を取り合い、親睦を深めている魔物もまた存在したのである。


ぴこーん……ぴこーん……


電子音が鳴り響く艦内を、黒衣に身を包んだ三人の人影が練り歩いている。

彼らは用心深く周囲を探り、追っ手がいないことを確認してからフードを跳ね上げた。

ひたいに生えた小ぶりなつのが露わになる。


鬼のひとたちであった。


ここは精霊王の一人、フェニックス級と呼ばれる戦艦の内部だ。

敵を騙すにはまず味方からという言葉もある。先人の言葉に従って遠慮なく仲間を裏切った鬼のひとたちを、モグラとよく似た姿をした精霊たちが出迎えた。

土の精霊たちである。


鬼のひとたちは、モグラさんたちの肩を親しげに叩くと、エルフの里に伝わる言語で流暢に話しかけた。


王国「ブラザー。どうだい、調子は?」


帝国「久しぶりにまとまった時間がとれてな。今日はゆっくりできそうだ」


連合「手土産は気に入ってくれたか?……ああ、シミュレーションルームに放り込んでおいてくれ」


魔物たちの魔法に翻訳の働きを持つものはないが、気の利いたテキストと辞書さえあれば自前のスペックでネイティブな発音を身につけることも可能だった。


モグラさんたちが歓迎の意を込めて目をぴかぴかと光らせる。

彼らとの意思疎通は困難だったが、法則性さえ掴めば子狸さんほどではない。


談笑を交えて艦内の通路を一緒に歩いていく。


鬼のひとたちとモグラさんたちの仲はしごく良好であった。

鬼のひとたちが魔物界の小道具担当であるとすれば、モグラさんたちは精霊界の大道具担当である。

分野は違えど、両者は言ってみれば同好の士であった。


鬼のひとたちは上機嫌だ。

精霊たちは知的で心優しい。とある青いのみたいに祭りと称して王種の素材を集めて来いとか無茶なことを言い出さない。

もちろん仲間を大事に思う気持ちはあったが、むしろ子狸さんの意を汲んでいるのは自分たちのほうであるという矜恃が勝っていることは認めざるを得ないだろう。


モグラさんたちに案内されたのは、人型の機動兵器が整然と並ぶ格納庫であった。

広大なスペースに所狭しと巨人が整列している光景は、まさしく壮観と言い表すに相応しい。

機体のあちこちに取り付いたモグラさんたちが、各々熱心に作業している。


非常に興味深い。

昔ながらの鍛治職人である鬼のひとたちは、こと兵器類に関しては門外漢だ。巨大なロボットを造ったこともあったが、その知識の幾ばくかは古代遺跡から仕入れたものである。

しかしモグラさんたちにしてみれば、鬼のひとたちの持つ磨き抜かれた技術の多くが魅力的なものだった。


連合「ん?……ああ、エルフの布鎧か。順調だよ。しかし金属製ではダメなのか?あれでは圧縮弾を軽減するのがやっとだ」


騎士が金属製の鎧で身を固めるのは、圧縮弾を防ぐためである。

最速最短の圧縮弾を無力化できるということは、魔法の撃ち合いにおいて途轍もなく大きなメリットになる。

ただし重い。歩いていて生きるのが面倒になるほど重い。ごろごろと地面を転がって移動したほうが速いエルフには適さないだろう。


王国「……ふむ。気分の問題なのか。まあ、たしかに気分は大事だな」


連合「飾り付けなら任せてくれ。さいきん、おれっとこの騎士どもは色気づきやがってな……」


モグラさんたちのアイコンタクトに相槌を打ちながら、鬼のひとたちは庫内を見て回る。


ふと庫内の一角が目にとまった。

小ぢんまりとした建物の周りにモグラさんたちが集まって興奮気味に目をぴかぴかと光らせている。


王国「ん。シミュレーションルームか」


どれどれ、と鬼のひとたちが集団に歩み寄る。

鬼のひとたちに気付いたモグラさんたちがモニター機材の手前に席を用意してくれた。

なんて気が利くひとたちだろう。鬼のひとたちは、自分たちは生まれる国を間違えたのかもしれないと思いはじめる。


シミュレーションルームとは、仮想空間での機体動作をチェックする小部屋だ。

じっさいに機体を動かさなくとも、データを打ち込めば様々なシチュエーションでシステム上の不具合を洗い出せる。


現在ルーム内で実施されているのは戦闘モード。難易度はイエローゾーンを突破し、レッドゾーンに突入していた。

自機設定は鬼のひとたちが製造に関わった「世界の鎧シリーズ」の次期主力機である。


ここで鬼のひとたちがモグラさんたちと仲良しになった経緯を紹介しよう。


精霊たちと交信するもの、すなわちエルフたちは、程良い刺激を求めて海を渡ってきた。

彼らの精霊魔法は極めて強力な魔法であったが、直接戦闘には向かない。

子狸さんみたいに全身から放電したり、燃え上がる魂を爆発させて着ぐるみみたいになるのは難しい。とても難しい。ほとんど無理なのだ。

したがって、エルフたちは精霊に指示を出し、コストを調整するのが仕事になる。

それではつまらないとか言い出したエルフがいたらしい。


そこで彼らは、召喚した精霊と合体するオーバードライブとかいうシステムを考案したのだが、まず物理的に不可能だったため、次善策として精霊に搭乗して操縦するという案を大道具担当のモグラさんたちに押し付けた。


モグラさんたちは困った。ひとことで言えば、ジャンルが違うような気がしてならなかったのである。


しかし、そこは心優しいモグラさんたちのこと。せっせと機動兵器を組み上げ、完成を間近に控えたある日のこと、いつの間にか鬼のひとたちが作業員に混ざっていた。

バレては仕方ないと開き直った彼らは、設計図を片手に口出しをはじめた。


王国「……自爆装置はつけないのか?」


帝国「自爆は大事だぞ。おれらっとこに、ほら、なんか透き通ったのがいるだろ?見えるひとな。あいつ、異常に操縦が上手いんだよ」


見えるひとは霧状の身体を持つ魔物だ。微妙に発光していて、夜中に遭遇すると凄く心霊現象みたいになる。

本人としてはボディランゲージに特化したつもりだったらしいが、数々の幽霊騒動を巻き起こした結果、世間では亡霊扱いされている不憫なひとである。

日光の下では居るのか居ないのかよくわからない影の薄さがチャーミングポイントだ。


その見えるひとが、何故か機動戦では妙な輝きを放つ。

本人の証言によれば「自分の身体を動かすよりも簡単」であるらしい。


それ以来、鬼のひとたちは見えるひとをぎゅうぎゅう詰めにしたい(隠語。相互理解を目的とした医学的なアプローチを指して言う)と思っているのだが、恥ずかしくてなかなか言い出せずにいる。


話を戻そう。

鬼のひとたちは、モグラさんたちに自爆装置の必要性を熱く語った。


連合「ヤツを墜とすには自爆しかないぞ。イイ感じの雰囲気に持って行って自爆したら、なんか避けちゃダメみたいな流れになるだろ?そこを突くんだよ」


元々、機動兵器は魔物たちとの戦闘を想定したものである。

鬼のひとたちの言葉には説得力があった。

感銘を受けたモグラさんたちは、正式に鬼のひとたちをアドバイザーに招き、共同開発を進めていった。


そして、現在。

ちょっと飲みに行かないかと誘い出したらホイホイとついてきた見えるひとを、ぽかりとやってシミュレーションルームに放り込んでみた。


モニターを通して、奮闘する見えるひとの絶叫が聞こえてくる。

一対多の圧倒的な劣勢下、見えるひとの機体が見ていて気持ち悪くなるような動きをしている。


驚異的な撃墜スコアを叩き出している見えるひとにモグラさんたちは目を輝かせているが、鬼のひとたちは感動を通り越して呆れていた。


帝国「よぉやるわ」


王国「ホントにどうなってんだ、コイツの身体」


連合のひとは、勝手知ったる他人の家とばかりに機材を操作している。


新しい機体に見えるひとは早くも適応していたが、最初からそうではあるまい。

別モニターの映像をきゅるきゅると巻き戻して、シミュレーション開始から序盤の様子を窺う。

王国のひとと帝国のひとも席を立って連合のひとの後ろからモニターを眺める。


帝国「おい、見ろよ。なんかもう序盤から気持ち悪い動きしてるぞ」


王国「……こういうの見ると、D.M.P.Sの限界を突き付けられた気分になるんだよな〜」


王国のひとが愚痴った。

D.M.P.Sとは、ダイレクトモーションパターンシステムの略称であり、パイロットの動きをそっくりそのまま機体に反映する機構を指す。

あえて誤解を恐れず言うならば、単なる着ぐるみである。


ただし着ぐるみ呼ばわりすると、D.M.P.S採用の専用機に乗っている子狸さんが何を言い出すかわかったものではないのでお洒落な呼び方をしている。


いずれにせよ、D.M.P.Sが鬼のひとたちの最高傑作の一つに挙げられることは疑う余地がなかった。


それなのにモニターの中でガチャガチャやっている見えるひとは、もはや人体の稼働域を超えた動きをしている。機体も気持ち悪いが、パイロットはもっと気持ち悪い。


連合のひとがぽつりと呟いた。


連合「あ、こりゃダメだ」


見えるひとの反応速度に機体が追いついていない。

よって自爆モードが作動した。


亡霊『!?』


とつぜんの出来事に見えるひとはびっくりしている。

コントでも見ているような気分だ。

くすくすと鬼のひとたちは微笑む。


見えるひとの壮絶なる戦いは続く。敵機の攻撃を回避しつつ、手動で自爆モードを解除。手慣れている。自爆は世界の鎧シリーズに共通する機能の一つだ。

だが、次期主力機は自爆まわりを大幅に強化している。


早送りで進む映像を、帝国のひとがぴたりと指差した。


帝国「ここだ。見ろ」


王国「なんて射撃精度だ。火器管制システムを物ともしていない……」


宙返りしながら撃った光線は、まるで吸い込まれるかのように敵機を貫いた。

この場面。注目すべきは、コクピットに仕込まれたスロットマシーンだ。

敵機を撃墜するたびにスロットが回り、スーパーボーナスチャンスが与えられるという、鬼のひとたちの新たな試み。


ポップな曲調と共にくるくると回るスロットを、これまでは無視していた見えるひとであったが……


ポンポコっ

ポンポコっ


亡霊『!?』


三つの絵柄の内、二つが揃ったことで顔色を変えた。目ざとい。

子狸さんのマークが三つ揃ったら、ろくなことにならないと察知したらしい。なんと罰当たりなことだろう。

ちなみにCVは羽のひとの可愛らしい声を実録したものだ。


亡霊『ッ……!』


見えるひとはとっさにこれまで放置していたスロットのバーに手を伸ばし、小賢しくも目押しで鬼のひとの絵柄を引き当てた。とりあえず製造者のマークにしておけば悪いことにはなるまいと考えたに違いない。


だが甘い。その程度の浅はかな考えはお見通しだ。


子狸『知らなかったのか?……魔王からは逃げられない』


子狸さんの音声が無情にもコクピットに響き渡り、どろんと鬼のひとのマークが化けた。


ポンポコっ


亡霊『ばかなっ……!』


連合「ばかな頂きました」


王国「ありがとうございます」


帝国「ありがとうございます」


ポンポコマークが三つ揃った。

見えるひとはろくなことにならないと予想したようだが……

当然、無事では済まない。


正面の操作盤がうぃーんと開き、中から小さなTANUKIさんが出てくる。

手のひらサイズの子狸さん専用機……いや、あれはOYAKATAモデル。父狸さんだ。

魔物たちは、父狸を畏敬の念を込めて「お屋形さま」と呼ぶ。


話は変わるが、魔物たちはバウマフ家のものを本名ではなく字名で呼ぶ。

子狸さんを子狸さんと呼ぶように。

その字名は、バウマフ家のものが一人前になったとき、過去の行状を参考に魔物たちが決める。

子狸さんが子狸さんと呼ばれるのは、まだ一人前とは言えない成長途上にあるからだった。

つまりは幼名なのである。


そうまでして魔物たちが字名にこだわるのは、座標起点ベースの分身魔法、いわゆる完全コピーの習得条件の一つだからだ。


バウマフ家の幼名は、親の字名で決まる。

では、父狸の幼名は何であるか。


ラブコメ王子である。


魔物たちが一生懸命がんばっている横で、変なラブコメをしていた父狸には似合いの幼名であった。


そして子狸さんの完全コピーが子狸さんであるように

父狸の完全コピーである父狸さんは……


愛の戦士なのだ。


操作盤に後ろ足で器用に立った父狸さんが、妙に艶のあるイケメンボイスで言った。


父狸『この非常時に、そうまでおれの息子に執着するワケはいったい何なんだ?……まったく……。お前には少しキツイお灸を据える必要があるようだな……?』


鉄板のお屋形さまネタに見えるひとが吹き出した。

コクピットに警報が鳴り響く。

もはや言うまでもないだろう。自爆モードへの移行だ。


見えるひとが半笑いで悪態を吐く。


亡霊『きっ、汚ぇぞ……!こんなの鉄板だろうが!鉄板だろうがよ!』


鉄板、鉄板と繰り返す見えるひと。

もちろんこのような所業がバレれば鬼のひとたちとて無事では済まない。

しかし鬼のひとたちの熱き職人魂が、彼らに保身を許さなかった。


その崇高とすら言える覚悟が伝わってきたから、見えるひとは戦場にあって戦いを忘れた。

自爆シークエンスがこく一刻と進行するさなか、被弾した鎧シリーズの片腕が吹き飛んだ。


亡霊『くそがぁっ……!』


鬼のひとたちは戦慄を禁じ得ない。


王国「ここまでやっても墜ちないのか……」


帝国「いったいどうすればコイツを沈められるんだ……?」


連合「……ここまでだな」


連合のひとが嘆息した。

序盤を乗り越えられたら、見えるひとを墜とす目はない。

あるとすれば、機体が耐えられなくなって空中分解するか、エネルギーが切れるかのどちらかだろう。

仮想戦闘はべつにパイロットをいたぶるものではないので、クリア不能なシチュエーションは設定されていない。今度、ナイトメアモードでも入れておこう……と心に決めながら、連合のひとはマイクを手にとってルーム内の見えるひとに声を掛けた。


連合「ここで切り上げよう。見えるひと、上がってくれ」


亡霊『……うーい』


シミュレーションを終えた見えるひとが、ふらふらと出てきた。

モグラさんたちが目をぴかぴかと光らせて出迎える。

彼らとの密通を、鬼のひとたちは隠すつもりがなかった。どのみち、いずれは露見することだ。

いや、たぶん何人かにはもうバレている。


精霊たちとは仲良くするべきだ。

そんなことは魔物たちもわかっている。ただ素直になれないだけだ。不器用なのだ。


帝国のひとが見えるひとに声を掛けた。


帝国「新しい機体はどうだ?要望があれば聞かせてくれ」


亡霊「そうだな……」


見えるひとは、モグラさんたちについては触れなかった。

やはり気が付いていたのだろう。


亡霊「とりあえず、意地でも自爆しようとするのはやめてほしい。……できるか?」


帝国「難しいな……」


亡霊「難しいのか……」


見えるひとはうなった。

王国のひとの声は明るい。見えるひとのシミュレーションを経て、今後の見通しが立ったようだ。


王国「まだ試験段階だからな。これから更にミニゲームを充実させるつもりだ」


すると見えるひとは悔しそうに言った。


亡霊「……正直、ミニゲームはちょっと面白かった」


苦笑して、片手を上げる。


ふっ、と笑みを零した鬼のひとたちが、同じように手のひらを見えるひとに向けた。


連合「おつかれ」


亡霊「ああ」


ぱん、と合わさった手のひらが渇いた音を立てた。



〜fin〜



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