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第二話 四人四色な部員が集う3

 星空学園には科学研究部なるものが存在する。部長の名は機器改械ききかいかい通称『迷える科学』。

 機器は今年の夏に、一年生ながら部長に就任。就任直後、機器はある計画を打ち立てた。その計画とは『アンドロイド製造計画』。機器は二ヶ月足らずでプロトタイプを作り上げ、生徒会に献上した。だがプロトタイプには、人の言うことを何でも聞くという長所、しかし逆にいえばそれは、人の言うことを聞きすぎるという欠点となり、ゆえに歯止めが効かず暴走することがあった。生徒会はやむなくプロトタイプを停止させた。

 プロトタイプは今も眠り続けている。目覚めの時を今か今かと待ちわびながら。



 彼女を……起動させるのですね? その言葉に帝人は即座に頷いた。

「でも帝人、彼女は危険だわ。いつ暴走するか分からないもの」

 美咲華は不安げに言葉を返した。

「大丈夫だ。対策はしているからな」

 帝人は自信満々に答えた。

「対策……? 一体何ですか?」

「それはな。機器に頼んで、暴走すると自動的に停止するプログラムを仕込ませといた。これで安心だ」

「帝人、そんなことができるなら、暴走しないようにプログラムすればよかったんじゃないか?」

「それもそうだが、面白くないだろ?」

「何がだ?」

「欠点だよ。欠点がなかったら面白くねえだろ。何事も完璧じゃないから面白いんだ。違うか?」

「いや、違わない」

「だろ。それにあれはプロトタイプだからな。欠点があってちょうどいいのさ」

 帝人は立ち上がり、

「じゃあ、機器のところに行って、起動させてくる。今日はもう帰っていいぞ。明日からこの俺とプロトタイプも、見張りに参加するからな」

 帝人は去っていった。残された三人も立ち上がり、帰路に着いた。



 同じ頃、星空学園から離れた工場跡地で、一人の少年が座り込んでいた。

 もうそろそろ来る頃か? 少年はそう呟いた。その時ギィッと音がし、一人の少女が駆けこんできた。少女は少年に向かって、頭を下げた。

「言塚様、報告すること、ありまするー」

 少女は『詩人』夢見輝代だった。

「聞こうか」

 そう言った少年は『言葉使い』言塚言語ことづかげんごだ。

「願え屋を、監視する人、いたのですー」

「それは誰だ?」

「三羽鴉、黒闇美咲華、だったですー」

「黒闇美咲華か。たしか織姫に満欠虚無が付きまとってるという報告もあったな。こうなると守護も関わってる可能性もある」

「一体なぜ、三羽鴉は、監視するー」

「そうだな。もしかしたら俺たちが調べまわっていることに気づいて、邪魔しようとしてるのかもな」

「そうならば、私めたちの、障害にー」

 言語はそれを聞き、思案するようなそぶりを見せた。そして輝代に向かってこう命じた。

「どんな手を使ってもいいから、三羽鴉をつぶして来い」

 輝代は首肯し、命令を遂行するべくその場を立ち去った。

「面白いことになってきた」

 言語は楽しそうに笑っていた。



 織姫は今、静と二人きりで家路についていた。織姫はこの状況に、ドキドキが止まらなかった。織姫はチラリと静の横顔を眺めた。目があった。どうしよう嬉しい、幸せだ。

「織姫、俺は今日のことを天道先生に喋った方が、いいと思うのだが?」

「っ!」

 織姫は急に話し掛けられたので、驚いた。

「? どうした何かあったか」

「ん? いや……何でもないよ。それより今日のことというのは、嘘月とのことかい?」

「あぁ、そうだ。もうしないように注意してもらわないとな」

「いや、しなくてもいいよ。悪気は無かったと思うしね。それより話したいことがあるんだけどいいかな?」

「悪気がなかった……? あれでか? まぁ織姫が言うなら仕方ない。それで話とは?」

「ん? あぁ、歌絵さんが、三日後の夜に学校で野外ライブをやるらしいよ」

「そうか。『囁きの歌姫』がライブを……楽しみだな」

「うん、そうだね。だから静、一緒に見に行こうよ。もちろん、みんなも誘ってね」

「あぁ、分かった。一緒に行こう」

 織姫はある事を思い、言うか言うまいか迷った、が、結局言うことにした。

「ねぇ、静」

「なんだ、織姫」

「嘘月も誘いたいんだけど……いいかな?」

「嘘月を……? 何でだ?」

「何でって……何でだろうね」

「自分でも分かんないのか?」

「さぁね。私は嘘月が、噂ほど悪い奴とは思えなくてね。だからかな、彼に少しだけ興味を引かれるのは。もしくは彼が『嘘月』だから私は惹かれるのかもね」

「どういう意味だ?」

「そのうち分かるよ」

 織姫は笑って言葉を濁し……思った。私が彼に惹かれるのは、彼が月だからだ。月とはその輝きによって、人を狂わせ魅了し惹き付けるものだと、私は思っている。彼は私が思う月、そのものだと。

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