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1頁:起床

目が覚めて、否、醒めて始めに見たのは、白い天井だった。徐々に焦点の合っていく眼を左右に動かし、周りを確認する。

視線を右に動かして見えるのは、純白カーテンの掛かった窓、そして心電図計。(…………?…)何故、心電図計などがある?おかしい、と思い更に周囲を見回すと、左方面には点滴具と小さなテーブル。軽く顔を上げて見れば、他には特に目立った物はない、そこは個室ほとんどが白一色の清潔な空間だった。そう、つまり、ここは、

「病院……?なんでっ!なぜですか!?」

あまりの事に思わず敬語になる。と、

「やっと起きたのね……」

静かな声が窓側から投げかけられた。

振り向けば、そこには少女が立っていた。

身長150半ばの体を黒のブラウスに黒のスカートといった黒一色の装いでまとめている。顔立ちはどちらかと言えば幼げで、大きく吸い込まれそうになる様な黒、というよりは藍色の瞳が特徴的であり、それと同時に艶やかで腰にかかるほどに長い黒髪にも目がいった。

笑えばかなり可愛いだろうと思えるが、今は刺されるかと思うほどに鋭い視線がその思いをかき消していく。

「………勿体無い…」

「なにが?」

「いえ、何でも……」「そう………で?」

しばしの沈黙が流れる。よく意図が掴めない。

「はい?」

とりあえず、聞いてみた。

「何か言うことは?」

答えが帰ってきた。考える。

目が覚める→病院に居る→少女が居る→言うことは?

思考完了!つまり

「どちら様ですか?」

満面の笑顔で聞いた。とたん、グーで殴られた。

「痛いですよ!」

「うるさい!余計なボケをするな!」

「いや、ボケたつもりは無いけど…」

余りの理不尽さに思わず抗議を入れると、

「ほぅ…反論するか?」

と少女は再び拳を握った。

「すいません、暴力反対の方向で進んでください。」

と自分が折れることでその場を納めることにした。いや、目が本気だったから…

少女はまったくといった感じでこちらを見た。そして、

「とりあえず、無事でよかった。」

と、ここで初めて視線から力を抜き微笑を向けた。笑えば、やはり良い笑顔をする。

「あ〜ありがとう、」状況は解らないものの心配をかけていたらしいので、礼を返してから話を切り出した。

「ところで、真面目な話、何故に俺はこんな所に寝てるの?それと、君はいったい?」

と、今の疑問を正直にぶつけた。少女はというと、目を丸くしている。

「えっと……聞いてる?」

と声を掛けると、少女はハッとして言った。

「も、もしかして、何も聞いてなかった?」

頷く、途端に少女の顔が真っ赤になると。

「ご、ごめんなさいっ!目覚めたから、てっきり全部聞いたものかと…すいません」

と、頭を下げてまくし立てるように言った。その言動の中に疑問がある、それは

「と、言うよりさ、誰に聞けるのさ?俺寝てたんだし……?」

何か、引っかかる。寝てた、確かに寝てた、でも……。考えていると、少女から言葉が来た、

「あの……夢を見ませんでしたか?」

と。

「あ?ああ、見たよ。自分の夢なのに自分の夢じゃないような夢………って!何で知ってるの!?」少女は疑問に答えない。ただ、

「まったく、ちゃんと話してって頼んだのに……アイツ」

と病室の天井を見つめるだけだった。すごい目つきで……

「あの〜」

と恐る恐る掛けた声に気づいた少女は、顔を戻し言った。

「あっ、すいません。ちょっと用事が出来たので、また、来ますね。」

と、言うと少女は出口の方へ歩き出した。

いや、ちょっと待て

「待ちなよ!」

その声に少女は振り返り、疑問の目を向けてくる。

「せめて……名前くらい教えてくれよ。」

「え?」

「俺は、室月・総志むろつき・そうし君は?」

少女は一瞬迷ったが

「霧島・霧香きりしま・きりかです。」

と言うと、少女は出ていった。

考える。解らない事ばかりだ…、只、判る、これから、

「忙しそうだ……」

その言葉と共に、総志は眠りに就いた。

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