北方の火
ガルドが北方に入って四日目、グレイ・ハンドの拠点が見えた。
廃城を改造した要塞で、五十人ほどが立てこもっている。王宮の討伐隊は百人。戦力差は明らかだが、地形の複雑な北方では数が多ければ勝てるわけではない。
ガルドの役割は現地案内だ。
戦うために来たのではない。でも、隊長が地図を見ながら迷っているとき、ガルドは自然に前に出ていた。
「この崖の裏に、一本道がある。六年前はあったが、今もあるかどうかは確認が必要だ」
「確認してくれるか」
「行く」
単独で崖を回り、道を確認した。あった。雑草に覆われていたが、道の形は残っていた。
その情報で、討伐隊は迂回路から展開することができた。
拠点の包囲は半日で完成した。グレイ・ハンドは抵抗したが、逃げ道を塞がれた状態では長く続かなかった。三日後、首謀者が捕縛された。
ガルドは戦闘には加わらなかった。現地案内と情報提供だけをして、後方で見ていた。
でも任務が終わった後、村人たちがガルドのところに来た。
「助かった」
ヘルムの老人が言った。
ガルドが「俺は案内しただけだ」と言った。
「それが一番大事だった。道を知らなければ、王都の人間はここに来られなかった」
ガルドが黙った。
秀はその場にいた。
地道な仕事が、大きな結果の土台になる。目立つ場所にいなくても、誰かの命を救える。
ガルドがそのことを、今日初めて全身で受け取った顔をしていた。




