レインと「もう一つの目」
単独任務から戻ったレインは、町外れで奇妙な感覚を覚えた。
見られている、という感覚だ。
でも周囲を見回しても、誰もいない。
レインは剣の柄に手をかけかけて、やめた。
(人じゃない)
鍛えた勘がそう言っていた。悪意もない。害意もない。ただそこに、何かの目がある。
「……誰だ」
声に出してみた。答えは返ってこなかった。当然だ。
でも気配が、少し変わった。
驚いたような、それから何か申し訳なさそうな変化だった。
レインが「怖くはない」と言った。「ただ、気になる」
気配がまた変わった。
秀はその場で固まっていた。
レインに、気配が伝わっている。
他のキャラクターに見えたことはなかった。サラにもガルドにも、秀の存在を感じた様子はなかった。なぜレインは気づいたのか。
鍛えすぎた勘、というやつか。路地裏で生き抜いた少年の、研ぎ澄まされた感覚か。
レインがしばらくその場に立っていた。
「……まあ、いい」
やがて言った。「悪いやつじゃないと思うから」
それだけ言って、歩き出した。
秀は呆然と、その後ろ姿を見ていた。
(俺の存在を感じたのか、レイン)
言葉は届かない。でも、確かに何かが届いた瞬間だった。
「もう一つの目」も、その場にいた。
あちらも同じように驚いている。
この世界の誰かが、ナレーターの存在に気づいた。それはテアトルムが始まって以来、初めてのことだった。




