ガルドと王宮の動き
秋が深まる頃、セドリックから連絡が来た。
「グレイ・ハンドへの対処が決まった。北方に討伐隊を送る。現地案内を頼みたい」
ガルドは訓練所の自室でその書状を読んだ。
エイルがいれば相談できたが、実家に帰っている。オルデンに見せると「どうする」と聞かれた。
「行く」
「訓練所はどうする」
「しばらく任せていいか」
オルデンが「仕方ない」と言った。「でも戻ってこい。生徒たちがお前を必要としている」
「わかっている」
ガルドは出発の準備をしながら、久しぶりに騎士の装備を確認した。革鎧は少し硬くなっていたが、手入れすれば使える。剣は訓練所で毎日磨いていたから問題ない。
出発の前夜、ガルドは訓練所の中庭に出た。
月が出ていた。
秀はその月を見ているガルドの隣に漂った。
この男は変わった。一年前、ラメールの酒場の隅で手を震わせていた男が、今は北方の任務に向かおうとしている。
何が変えたのか。
一つではない。レインとの出会い。オルデンの友情。エイルという生徒。村人たちの声。そのすべてが少しずつガルドを動かした。
人は一つのことで変わらない。無数の小さな出来事が積み重なって、ある日ふと気づけば変わっている。
ガルドが剣の柄に手をかけた。
今度は躊躇せず、抜いた。
月光が刃に反射した。
ガルドはしばらく刃を見てから、静かに収めた。
準備はできている、という顔だった。




