三つの報告
初夏の頃、三人がそれぞれの「報告」をした日があった。
ガルドは王都に戻り、調査官セドリックに北方の調査結果を届けた。
エイルが書き上げた記録は、分厚いものになっていた。事実、証言、分析、地図、推察。どれも丁寧で、歪みがない。
セドリックはそれを読んで、しばらく黙った。
「……これを書いたのは生徒か」
「俺も加えた。だが骨格はあいつが書いた」
「十六歳で、これほどの報告書を書くとは」
「いい生徒だ」
セドリックが「グレイ・ハンドへの対処は動きます」と言った。
「この記録があれば、王宮が動く理由になる」
ガルドは頷いた。名誉回復の話を持ち出されたが、「それは構わない」と答えた。
村人の声が届く。それで十分だった。
同じ頃、ラメールではレインが上官に報告書を提出していた。
旧孤児院の主ドレス・カイムの処置についての顛末と、今後子供たちの生活を安定させるための提案書だ。正規衛兵になった初日に、レインが自ら書いて持ち込んだ。
上官は驚いた顔をした。
「お前、昇格してまだ三日だぞ」
「だからこそ早い方がいいかと思いました」
「……わかった。検討する」
そしてサラは、ヴァルハイムの地図商に手紙を書いた。
古代街道の実測記録と、地図にない集落の存在を伝える内容だ。地図商からは「ぜひ詳細を教えてほしい」という返事がすぐに届いた。
三人が、それぞれの場所で、それぞれの形で、世界に何かを届けた日だった。
秀はその三つの「報告」を、時間差で見ていた。
(三人とも、前に出てるな)
自分の仕事の結果を、ちゃんと次に繋げようとしている。受け身ではなく、能動的に。
テアトルムの世界は、こういう人間たちによって少しずつ良くなっていく。




