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サラと父の約束
ラメールに帰ったサラは、二週間の旅の疲れを一晩で回復し、翌朝から食堂を再開した。
父の体調は、出かける前よりさらに良くなっていた。
「良かった。倒れてないか心配してた」
「フィネさんがずっといてくれたよ。それと……」父が少し間を置いた。
「マルクスから手紙が来た」
サラが目を上げた。
「帰ってくる日が決まった。秋の終わりだ」
「本当に?」
「本当だ」
サラが椅子に座った。
兄が帰ってくる。父の体が良くなっている。食堂がまわっている。
「父さん、私ね」
「うん」
「また旅に出たいと思ってる。今度は一人で、もっと遠くへ」
父が黙って聞いていた。
「でも帰ってくる。絶対帰ってくる。だからここを、守っておいてほしい」
父がゆっくりと頷いた。
「行ってこい」
「うん」
「お前の地図に、ここも書いておけよ」
サラが笑った。
「書いてある。一番最初に書いた」
父も笑った。
秀はその食堂の小さな窓から、外の通りを見ていた。
帰る場所がある人間の旅は、強い。どこへ行っても、帰る先の灯りが見えているから、足が前に向く。
サラの地図の中心に、この食堂がある。それがどれほど大切なことか、サラ自身はまだ完全にはわかっていないかもしれない。でもいつかわかる。




