試験の朝
レインの昇格試験は、朝から始まった。
試験は三部構成だった。筆記、実技、面接。
筆記は法律と規則の知識を問うもので、レインは事前に何度も読み込んでいた。問題を見て、一つずつ答えた。難しい問いもあったが、空白を作らないことだけを意識した。
実技は模擬的な状況対処。暴漢の制圧、群衆の誘導、けが人の搬送補助。いずれも訓練でやってきたことだったが、試験官の目の前でやると緊張が違う。
最後は面接だった。
試験官が三人。一人が資料を見ながら、一人が腕を組んで観察し、一人が淡々と質問する。
「衛兵になった理由は」
「仲間を守りたかったからです」
「仲間とは誰のことだ」
「一緒に暮らしている子供たちです。それと、この町に住む人たちです」
「この町に縁があるのか」
「縁で言えば、薄いです。流れてきただけなので。でもここで暮らして、ここで仕事をして、ここに守りたい場所ができた。それで十分だと思っています」
試験官の一人が「年齢が若いが、正規になってから一人前の判断ができるか自信はあるか」と聞いた。
「自信は半分あります」
「半分か。残りの半分は?」
「わからないことはわからないと言える自信があります」
試験官たちが顔を見合わせた。
秀は試験室の隅に漂っていた。
(上手いぞ、レイン)
自信満々に「できます」と言わない。かといって「わかりません」と逃げない。できることとできないことを、正直に分けて答えた。それが一番信頼される答え方だ。
試験の結果が出たのは、三日後だった。
合格。
通知書を受け取ったレインは、一人で川辺に行った。
誰かに見せるでもなく、一人で通知書を見ていた。
やがて折りたたんで、懐にしまった。
そして立ち上がって、家に帰った。
コルたちが「どうだった?」と飛びついてきた。
「受かった」
歓声が上がった。
レインは照れたように顔を背けたが、その耳が少し赤かった。




