レインの昇格試験
春の終わり、レインに正式な昇格試験の通知が届いた。
見習いから正規の衛兵下士官への試験だ。合格すれば給金が上がり、独立した任務を任されるようになる。年齢制限がある試験だが、レインの場合は特例として推薦状が上官から出ていた。
通知を受け取ったレインは、その夜一人で川辺に行った。
かつて地図を書いていた場所だ。
川面を見ながら、しばらく黙っていた。
コルが後からついてきていた。
「なんで一人で来たの」
「一人で考えたいことがあった」
「何を考えてるの」
「試験のこと」
コルが横に座った。
「受けるんでしょ?」
「……迷ってる」
コルが目を丸くした。
「なんで? ずっと目指してたじゃないか」
「合格したら、任務が増える。ここにいる時間が減る。お前たちのことが心配だ」
コルが少し黙った。
それから「レイン」と言った。
「何だ」
「俺、もうちゃんとできるよ」
レインがコルを見た。
「リナの熱が出たとき、ちゃんと対処した。買い物も、夕飯の準備も、できるようになった。レインがいなくても、みんな大丈夫だよ」
レインが川を見た。
「……そうか」
「だから行ってこいよ。俺たちのために、強くなってきてくれよ」
レインが長い間黙っていた。
秀はその沈黙に何も言えない。言えなくても、レインの横顔が雄弁だった。
十四の子供が、もう何年も前から背負ってきた重さの話だ。今夜、十歳の子供が、その一部をちゃんと受け取った。
「……わかった」
レインが立ち上がった。
「受ける」
コルが「よし!」と声を上げた。その声が川に反響した。
試験は二週間後だった。




