表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/58

北方の村で

 ガルドとエイルが辿り着いた村の名前は、ヘルムという。


 王都から北へ五日。山と森に挟まれた盆地に、百人ほどが暮らしている小さな集落だ。石造りの家が肩を寄せ合うように並び、中央に井戸が一つ、その周りに村人たちが集まっていた。


 村人たちは二人を警戒した。


「王都から来た人間か」


 老人が代表して言った。目が鋭い。温かみはあるが、信頼はしていない目だ。


「そうだ。調査に来た。ただし王宮の正式な使者ではない」


 ガルドは正直に言った。


「北方で何が起きているか、正確に知りたいだけだ」

「正確に知ってどうする」

「王宮に伝える。現場を見ずに机の上で判断する人間に、現場の声を届ける」


 老人がしばらくガルドを見た。


「……入れ」


 村の集会所に通された。粗末な長テーブルを囲んで、村の主だった人間が集まった。


 話を聞くうちに、状況が見えてきた。


 三年前から、北方の山岳地帯に新しい勢力が現れた。表向きは商会だが、実態は武装した組織だ。村々に「保護料」を要求し、払えない村には圧力をかける。税の拒否は王都への抵抗ではなく、その組織への対抗だったのだ。


「王都に何度も訴えた」と老人は言った。


「でも届かなかった」


 ガルドが黙って聞いていた。


 エイルは横で記録を取っていた。声も立てず、しかし一言も漏らすまいという顔で、ペンを走らせていた。


 夜、宿を借りた農家の納屋で、ガルドがエイルに言った。


「記録はできているか」

「はい。ただ……」


 エイルがペンを止めた。


「こういう話を聞くと、怒りが出てきます。それは記録に入れていいですか」

「事実だけ書け。感情は後でいい」

「でも、感情を持つことは間違いですか」


 ガルドが天井を見た。


「間違いじゃない。感情がなければ、何のために記録するかわからなくなる。ただ、感情が先に出ると事実が歪む。順番の問題だ」


 エイルが「……なるほど」と言って、また書き始めた。


 秀はその二人を見ていた。


 師が教え、弟子が学ぶ。その繰り返しの中で、両方が育っていく。


 教えることは、学ぶことでもある。ガルドはそれを、ここへ来て初めて実感しているのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ