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ラメールの春と、コルの決意
春になり、コルが十歳になった。
誕生日を祝う文化があるのかどうかわからないが、レインは前日に小さなケーキを買って帰った。コルが驚いて、それからはしゃいで、他の子供たちも一緒になって騒いだ。
夜が更けて子供たちが眠りにつき、レインとコルだけが残った。
「レイン」
「何だ」
「俺も、衛兵になりたい」
レインが振り向いた。
「お前が決めることだ」
「レインが教えてくれたら、なれる気がする」
「俺はまだ見習いだ」
「でも強くなってる。俺、毎日見てる」
レインがしばらく黙った。
「……訓練には付き合う。でも最終的に決めるのはお前だ。衛兵になりたいから衛兵になるんじゃなくて、何かを守りたいから衛兵になる、というのが筋だ」
コルが「何かを守りたい……」と繰り返した。
「ここ、守りたい。ここにいるみんなを」
「それでいい」
レインが立ち上がって、木剣を二本取ってきた。
「今夜は特別だ。一本やる」
コルが受け取った。その目が輝いた。
秀はその光景を見ていた。
レインが誰かに与えている。受け取ったものを、今度は渡している。
ガルドからレインへ。レインからコルへ。
何かが、人から人へと手渡されていく。
技術だけではなく、在り方そのものが。




