表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/60

サラが見た古代街道

 ルシア山脈は、想像より静かだった。


 クロウとサラが山道に入って三日目、周囲の音が変わった。鳥の声が減り、風の流れが変わり、空気に石の冷たさが混じり始めた。


「この辺りから先は人が来ない」クロウが言った。「道が消えるからだ」

「古地図では、崖の横に段差があるはずです」サラが地図を見ながら言った。

「そこを下れば……」

「あった」


 クロウが立ち止まった。


 崖の横、苔と草に覆われた段差があった。人工的な角度で、石を積み上げた跡が残っている。


 サラが駆け寄った。


 段差を一つ降りた。また一つ。


 崖の裏側に、確かに道があった。


 幅は人が二人並べるくらい。石畳の痕跡が残っていて、両側に石積みの壁がかすかに続いている。百年以上前に作られたはずなのに、不思議と崩れていない。


 サラが立ち止まった。


「……本物だ」


 声が掠れた。


 クロウが「ああ」と短く言った。


 サラはしゃがんで、石畳の表面に手を触れた。石は冷たく、湿っていて、苔が柔らかかった。


(本当にあった)


 誰かが作った。誰かが毎日歩いた。忘れられて、百年が経って、今サラの手がここにある。

秀はサラの手のひらを見ていた。


 こういう瞬間のために、サラは本を読み続けたのだ。地図を書き続けたのだ。信じ続けたのだ。


「記録しろ」


 クロウが言った。


「長さ、幅、状態、全部書き留めてくれ。それが仕事だ」

「はい」


 サラは地図を広げ、ペンを持った。でも一度だけ、地図から目を上げて道の先を見た。


 石積みの壁の向こうに、光が見えた。


 出口がある。道は続いている。


 サラは地図に線を引き始めた。


 点線が、今日から実線になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ