クロウの答えと、二つの地図
三日後、クロウがサラの食堂に戻ってきた。
「同行を許可する」
サラが顔を上げた。
「条件がある。俺の指示には従うこと。危険と判断したら即座に引き返すこと。依頼の内容を他言しないこと」
「わかりました」
「出発は十日後だ。荷物は最小限に。地図と、自分の足で動ける装備だけにしろ」
クロウが立ち去りかけて、振り返った。
「なぜそこまでしてその場所に行きたい?」
サラが少し考えた。
「本で読んだ場所が本当にあるか確かめたいからです。古代街道が今も残っているなら、誰かが作って、誰かが使って、誰かが忘れていった。その痕跡を自分の目で見たい」
「それだけか?」
「……地図に、自分の足跡を増やしたいというのもあります」
クロウが少し間を置いてから、「わかった」と言って出ていった。
父がお茶を飲みながら言った。
「信用できそうな男かい」
「わかりません。でも嘘はついてないと思います」
「お前の目は信じる。行っておいで」
サラは地図を広げた。ルシア山脈の古地図と、自分で書き込んだ新しい地図を並べた。二つの地図が重なるところに、まだ誰も確かめていない点線が走っている。
その点線の上に、サラは指を置いた。
秀はその指先を見ていた。
本の中の線が、現実の道になる日が来ようとしている。
夢は、こうして少しずつ現実の輪郭を持っていく。




