冬が来る前に
秋が深まった。
レインは孤児院の旧建物に子供たちを移す手続きを終えた。建物は広すぎるくらいで、屋根もしっかりしている。子供たちが初めて「ちゃんとした家」に入った夜、コルが走り回って転んだ。リナが笑った。誰かが「広すぎて迷子になりそう」と言った。
騒がしい夜だった。
レインは玄関の段差に腰を下ろして、その騒ぎを聞いていた。
秀はレインの横に漂っていた。
(お前が守ったんだな)
言葉は届かない。届かなくても、見ていた。
レインがずっと背負ってきたものが、今夜少し軽くなった、という顔をしていた。
サラは冬前に、食堂を小さくリニューアルした。旅で食べた各地の料理を参考に、メニューを三品増やした。父が起き上がれるようになったので、厨房を二人でやれるようになった。
新メニューの「山岳風根菜スープ」が意外に評判になった。
「どこのレシピだ」と客に聞かれて、「旅で覚えてきました」と答えるサラの顔が、前より自信に満ちていた。
ガルドは王都の訓練所で、初めて教師として冬を迎えようとしていた。
エイルの剣が、少しずつ形になってきた。右手の力みが取れてきた。体が、頭より先に動くようになってきた。
ある日の訓練後、エイルが言った。
「先生、最近剣が楽しくなってきました」
ガルドが「そうか」と短く答えた。
でも、その夜、ガルドは宿の窓から外を見ながら、口元を緩ませていた。
秀はその表情を見て、同じ感覚を思い出した。
メンバーの誰かが成長した瞬間に、自分のことのように嬉しかった、あの感覚。
三人がそれぞれの場所で、それぞれの冬を準備している。
テアトルムに、初雪の便りが届き始めた。




