表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/60

サラの地図が導くもの

 隊商がラメールへの帰路についた頃、サラは新しい地図を仕上げていた。


 旅で実際に歩いた道を、本の地図と照らし合わせながら修正した地図だ。点線だった古代街道の場所も、古地図を参考に書き入れた。自分の目で確かめた地形の細部も、丁寧に書き込んである。


「それ、売れるぞ」


 カルロスが覗き込んで言った。


「売りません」

「なんで。地図商に持ち込めば、いい値がつく」

「これは私が使うためのものなので」


 カルロスが「次の旅のためか」と言った。


 サラが少し間を置いた。


「……次の旅、ですか」

「お前は絶対またどこかへ行く。そういう目をしてる」


 サラは地図を見た。ヴァルハイムから先、南方のルシア山脈。古代街道の点線。まだ自分の目で見ていない場所がいくつも描いてある。


「行けたら、行きたいです」

「なら行けばいい。うちの隊商はいつでも歓迎する。先生がいると助かる」

「ありがとうございます。でも……次は一人で行くかもしれない」


 カルロスが驚いた顔をした。


「一人で? 危ないぞ」

「本で読んだ場所を、本で読んだ順番で、自分のペースで見たいので」


 カルロスは笑った。


「先生らしい」


 ラメールの町が見えてきたとき、サラは幌から顔を出して町を見た。


 出発したときと同じ景色なのに、違って見えた。


 自分が変わったのか、町が変わったのか。どちらでもある気がした。


 父の食堂に帰り着いて、扉を開けると、父が床に座って窓から外を見ていた。


「……起き上がれるようになったの?」

「少しな。フィネさんに手伝ってもらった」


 サラの目が滲んだ。


「お帰り」と父が言った。


「ただいま」とサラが言った。


 それだけだった。それで十分だった。


 秀はその場にいた。


 旅立つ前夜と、帰ってきた夜。二つの「父娘の部屋」の景色を、秀は両方見ていた。


 どちらも美しかった。どちらも、かけがえがなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ