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テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


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ガルドの過去

 夜、訓練所が静まり返った後、ガルドは一人で中庭に出ることがあった。


 星を見ていた。


 秀はその夜もガルドの傍にいた。


 ガルドが独り言を言うことは少ない。でも体の動きが、時々雄弁だった。剣の柄に手をかけて、抜かずに離す。それを繰り返す夜がある。


 ある夜、ガルドはオルデンの部屋を訪ねた。


 遅い時間だったが、オルデンは起きていた。酒を二杯、黙って用意した。二人で飲んだ。


 しばらくして、ガルドが口を開いた。


「……ヴァレン砦のことを覚えているか」

「覚えている」

「あの夜の判断が正しかったのかどうか、一年考えてもわからなかった」


 ヴァレン砦。秀はその名前を初めて聞いた。


 オルデンが静かに話した。ガルドの過去が、少しずつ輪郭を持ち始めた。


 三年前、北方の砦での鎮圧任務。反乱軍の残党を追い詰めたとき、砦の中に民間人が紛れていた。中に子供が一人いた。指揮官だった当時の団長は「民間人は関係ない、任務を遂行しろ」と命じた。


 ガルドは動けなかった。


 結果的に、その子供を連れ出すために隊列を離れた。任務の完遂は他の隊員が行った。でも隊列離脱は命令違反。ガルドは近衛騎士団を追われた。


「正しかったのか、間違っていたのか」とガルドが言った。

「俺には答えられない」オルデンが静かに言った。


「でもお前が後悔しているのは命令に背いたことじゃないだろう」

「……ああ」

「ではお前は何を後悔している」


 ガルドがグラスを回した。


「……もっと早く動けなかったことだ。子供が怯えた顔をするまで、俺は命令と良心の間で迷っていた。あの子を傷つけたのは俺だ。銃を向けた相手じゃなく、迷い続けた俺が」


 オルデンが黙った。


 長い沈黙の後、オルデンが言った。


「それはお前が思うほど罪じゃない。迷うことは人間の証だ。迷った末に動いた。それでいい」


 ガルドは何も言わなかった。


 でも、肩の線が、わずかに下がった。


 一年間、背負っていたものの、一部が降りた夜だった。


 秀はテーブルの上の二つのグラスを見ていた。


 人はこうして、少しずつ重さを下ろしていく。一人では無理でも、誰かがいれば下ろせる。


 前世でそれを教えてくれたのは、メンバーたちだった。

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