三つの道が再び交わるとき
ガルドがラメールを発つと決めたのは、オルデンの訪問から十日後のことだった。
返事は「行く」だった。
発つ前日、ガルドは酒場に行かなかった。代わりに剣の手入れをして、荷物をまとめて、早めに眠った。その夜は夢を見なかった、と顔が語っていた。
翌朝、ガルドは廃屋に立ち寄った。
子供たちが驚いて見ていた。レインが「何の用ですか」と言った。
「王都に行く」
「……そうですか」
「剣を教える仕事ができた」
レインが少し間を置いた。「よかったですね」と言った。
「お前もいずれ王都に来ることになるだろう。衛兵から正規騎士を目指すなら、王都の試験がある」
「……まだ先の話です」
「そうだな」
ガルドはポケットから小袋を取り出して、レインに渡した。重さから硬貨が入っているとわかる。
「受け取れません」
「俺の好きにさせろ」
レインが黙った。
「じゃあ、餞別として受け取ります」
「好きに呼べ」
ガルドは振り返りかけて、止まった。
「……お前はいい剣士になる。俺が言うんだから間違いない」
それだけ言って、今度こそ歩いた。
レインはその後ろ姿を、ガルドが角を曲がって見えなくなるまで見続けた。
秀はその場に残っていた。
三つの道が、それぞれの方向へ伸び始めていた。
ガルドは王都へ。サラは旅の途中。レインはここで剣を磨く。
一度交差した三人が、またそれぞれの道を歩いていく。でも交差は一度で終わらない。道は繰り返し交わる。この世界の道は、テアトルムという一つの舞台の上に引かれているのだから。
(また会うな、きっと)
根拠はない。でも秀にはそう思えた。
前世でも、縁のある人間とは何度でも出会った。どんな偶然も、後から見れば必然に見えるものだ。
雲が流れた。
ラメールの空が、広く開けて見えた。




