第53話 海底で古代兵器が暴れ出したけど、俺にとっては『S級パーツ取り放題』のボーナスステージだった
エリザベートが持ち込んだ『ラブ・ドリル号』の振動によって、竜宮城の地下深くで眠っていた何かが目覚めた。
『――警告。基幹システムに物理的衝撃を確認。防衛プロトコル「ポセイドン」、起動』
無機質な音声が海水を通して響き渡る。
ズズズズズ……!
宴会場の床が割れ、漆黒の装甲に覆われた巨大な影が姿を現した。
全長50メートル。
半人半魚のフォルムをした、全身がオリハルコン製の巨大ロボットだ。
その背中には、都市を一撃で消滅させる威力の「ハイドロ・キャノン」が搭載されている。
「な、なんですのあれは……!?」
寿司を食べていたエリザベートが目を丸くする。
「伝承にある『海神の守護者』……! まさか実在していたなんて!」
メルメディア女王が青ざめる。
ポセイドンのカメラアイが赤く光り、エリザベートのドリル潜水艦をロックオンした。
『敵性存在ヲ排除シマス。殲滅モード、チャージ開始』
キュイイイイイ……!
背中のキャノン砲に青白い光が収束していく。
まずい。あれを撃たれたら、潜水艦どころか竜宮城ごと消し飛んでしまう。
「さ、させませんわ! わたくしの愛機は壊させない!」
エリザベートが杖を構え、迎撃魔法を放とうとする。
「待てエリザベート! 魔法はやめろ!」
俺が止めるが、遅かった。
「食らいなさい! 『公爵家の怒り(ギガ・ファイア)』!」
水中で燃え盛る特大の火球が放たれる。
ドォォォン!!
直撃。しかし、煙が晴れると、ポセイドンは無傷だった。表面の青いバリアが攻撃を完全に無効化している。
『魔法攻撃ヲ検知。脅威度レベル上昇。反撃シマス』
「嘘でしょう!? あの火力が通じないなんて!」
「魔法障壁だ。古代の対魔法コーティングが施されている」
俺は冷静に分析しながら、口元の寿司(中トロ)を飲み込んだ。
そして、ニヤリと笑った。
「だが、魔法が効かないなら、『解体』すればいいだけだ」
俺はインベントリから、愛用の『ミスリルのドライバー(+7)』と『アダマンタイトのスパナ』を取り出した。
「リリアナ、イサナ号を呼べ! クジラの歌で奴の注意を引くんだ!」
「わ、わかったわ! イサナ、お願い!」
ズゴゴゴゴ……!
ドームの外からイサナ(島クジラ)が低い鳴き声を上げ、ポセイドンへ体当たりをかます。
巨体同士がぶつかり合い、ポセイドンが体勢を崩した。
「今だ!」
俺は床を蹴り、ポセイドンの膝関節へと飛び乗った。
【解析】スキルが、奴の構造図を脳内に映し出す。
【弱点発見:関節部のボルト(経年劣化により緩みあり)】
【S級素材:オリハルコン・ギア × 50】
【神級素材:海神の動力炉】
「へへっ、宝の山じゃねーか!」
俺のドライバーが光速で唸る。
ガガガガガッ!
目にも止まらぬ速さで、ポセイドンの膝のボルトを緩め、装甲板を剥がしていく。
『警告。右脚部ニ異常発生。機動性低下……エ? ナニコレ?』
ポセイドンのAIが困惑する中、俺はさらに登る。
腰、背中、そして頭部へ。
「次はキャノン砲だ! このレンズ、最高級の『深海水晶』じゃないか! もーらいっ!」
カシャン!
俺は発射寸前のキャノン砲から、主要パーツであるレンズとエネルギー回路を引き抜いた。
シュゥゥゥ……。
収束していた光が霧散し、ポセイドンはただのデクの棒と化した。
『エラー。武装ガ消失シマシタ。戦闘継続不可能。……アナタ、鬼デスカ?』
「いいや、道具屋だ」
俺は最後に、ポセイドンの胸部ハッチを強引にこじ開け、中枢にある『海神の動力炉(青く輝く球体)』を素手で掴んだ。
「これがあれば、店(イサナ号)の暖房も給湯も賄えるな」
ブチッ!
『システム・ダウン……zzZ』
動力源を抜かれたポセイドンは、ガクンと膝をつき(膝パーツはもうないが)、完全に沈黙した。
俺の手元には、山のようなS級パーツと、最強の動力炉が残った。
「ふぅ、いい運動になった。……さて、寿司の続きといくか」
俺がスパナを回しながら戻ると、魚人たちとエリザベートは、開いた口が塞がらない様子で固まっていた。
「……師匠」
「ん?」
「古代兵器を、家電のように修理(解体)するのはやめていただけます?」
「修理じゃない。『リサイクル』だ」
こうして竜宮城の危機は去り、俺はまたしても規格外の素材を手に入れた。
だが、ポセイドンが守っていた「何か」が、この騒動で露わになっていたことには、まだ気づいていなかった。




