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第48話 目的地に着いたと思ったら、島全体が『生きていた』件について

 セイレーンの海域を抜け、『休日号』は順調に航海を続けていた。

 俺の【解析】スキルとリリアナの操舵技術があれば、海の難所もただのドライブコースだ。


「ねえアレン、地図の座標だと……もう着いているはずなんだけど」


 リリアナが海図と睨めっこしながら首を傾げる。

 確かに、現在位置は「幻の島」を示すポイントの真上だ。しかし、周囲に見えるのは見渡す限りの大海原だけ。陸地の影ひとつない。


「おかしいな。まさか地図が偽物だったとか?」

「そんなはずないわ! 父さんは嘘つきじゃなかったもの!」


 その時だ。

 ザザザザ……。

 不気味な音が響き、周囲の海面が細かく振動し始めた。

 空が急に暗くなる。いや、違う。「海の色」が黒く変わったのだ。海底から、とてつもなく巨大な何かが浮上してきている。


「な、なによこれ!? 海底火山!?」

「いや……これは……」


 俺は船縁から身を乗り出し、海面を凝視した。

 ピロン♪

 【自動収集】のログが、見たこともない速度で流れ始める。


 [収集対象:古竜のフジツボ(S級)]

 [収集対象:万年苔の群生]

 [収集対象:島クジラの表皮(神級素材)]


「……デカすぎる素材だな」


 ズゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!!!


 海水が滝のように流れ落ち、目の前に巨大な「壁」が出現した。

 それは岩壁ではない。黒く、ゴツゴツとした生物の肌だ。

 全長数キロメートル。背中には森が茂り、古代の遺跡すら乗せている超巨大生物。


 伝説の「島クジラ(アイランド・ホエール)」だ。


「し、島が……浮いてきた……!?」

 リリアナが腰を抜かす。


 クジラは天を突くような潮を吹き上げると、低い鳴き声で大気を震わせた。

 『ヴォォォォォォォォ……』


「間違いない。こいつの背中が、俺たちの目的地だ」

 俺は『休日号』の舵を切り、クジラの背中に広がる入江(?)のような場所を目指した。


 ◇ ◇ ◇


 上陸してみると、そこは本当に一つの「島」だった。

 豊かな土壌(クジラの垢と堆積物)、生い茂るジャングル、そして中央には白亜の遺跡が鎮座している。


「信じられない……生き物の背中だなんて。地面が少し温かいわ」

「そりゃ体温があるからな。……おっと」


 俺は足元に生えていた黒いキノコを摘み取った。

 【深海マツタケ】。クジラの魔力を吸って育つ、市場価格・金貨100枚の超高級食材だ。


「おいリリアナ、籠を持ってこい! ここは宝の山だぞ!」

「あんたねぇ! 驚くところ、そこ!?」


 俺たちはジャングルを抜け、島の中心部にある遺跡へと向かった。

 リリアナの話では、そこに「秘宝」と「幻の調味料」があるはずだ。


 だが、遺跡の入り口に立った時、異変に気づいた。

 遺跡の柱が、何者かによって破壊されている。しかも、つい最近だ。


「……先客か?」

 俺が眉をひそめると、遺跡の奥から下卑た笑い声が聞こえてきた。


「ギャハハ! 伝説通りだ! この島には金銀財宝が眠ってるぜ!」

「お頭! こっちには見たこともない黒い液体が湧き出てます!」

「おう、そいつは高く売れそうだ。全部樽に詰めろ!」


 リリアナの顔色が変わる。

 

「この声……『黒髭』!? どうしてここがわかったの!?」


 遺跡の広場には、第3話で撃退したはずの海賊団の生き残りたちがいた。

 しかも、彼らの中心には、義手義足で全身を武器だらけに改造した巨漢――船長のティーチ(黒髭)が立っていた。


「よぉ、お嬢ちゃん。また会ったな」

 ティーチがニヤリと笑う。

「俺たちの船に発信機をつけておいて正解だったぜ。お前らがここへ案内してくれたんだ」


 彼らの足元には、俺が探し求めていた「黒く輝く泉」があった。

 芳醇な香り。大豆と小麦が醸された奇跡の芳香。

 間違いなく、天然の醤油ソイ・ソースの湧き水だ。


「てめぇら……!」

 俺の殺気が膨れ上がった。

「俺の醤油に、薄汚いブーツで近づくんじゃねぇ!!」


 宝(醤油)を巡り、島クジラの背中で最終決戦の火蓋が切られようとしていた。

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