表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/59

第43話 辺境(だった場所)が都会になりすぎたので、家出することにした

 世界を救う大掃除から、1年が経過した。


 かつて静かな森の中にあった俺の店『隠れ家ヘヴン』は、今も変わらずそこにあった。

 ……ただし、周囲の環境を除いては。


「本日の『アレン中央駅』行きの魔導列車は、満員となっております」

「高層タワーマンション『フェル・タワー』、最上階の分譲開始です!」

「観光客の方は、ガイドラインに沿って整列してください!」


 窓の外を見下ろせば、そこには地平線の彼方まで広がる「超巨大都市」があった。

 俺の店を目当てに世界中から人が集まりすぎた結果、森は切り開かれ、高層ビルが立ち並び、空には飛空艇が飛び交う、世界最大の経済都市『聖都アレンバーグ』が爆誕してしまったのだ。


「……違う」


 俺は執務室(かつての屋根裏部屋)で、山のような決裁書類に判子を押しながら呟いた。


「俺がやりたかったのは、こんな『市長』みたいな仕事じゃない……! 俺は、ひっそりと薬草を煮込んだり、変な剣を打ったりするスローライフがしたかったんだ!」


 バァン! と机を叩く。

 その音に、秘書官のようなスーツ姿に着替えたエリザベートが顔を上げた。


「どうなさいましたの、師匠(市長)? 次は隣国との通商条約の締結式がありますわよ」

「嫌だ! 俺は今日限りで市長を辞める!」

「またワガママを……。フェル様もノア様も、観光大使やインフラ管理で忙しいのですから、我慢してくださいまし」


 エリザベートがため息をつく。彼女はこの1年で、公爵令嬢としての手腕を遺憾なく発揮し、この都市の実質的な支配者(女帝)となっていた。


「くそっ……俺の店なのに、俺の居場所がない……」


 俺は窓を開けた。

 眼下には、俺の顔を模した巨大な銅像が立っている。恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。


 俺は決意した。

 「そうだ、支店を作ろう」


 この都市はもう手遅れだ。エリザベートたちに任せよう。

 俺は身分を隠し、誰も俺を知らない未開の地へ行き、そこでゼロからもう一度『隠れ家』を作るのだ。


「……ふふふ。そうと決まれば善は急げだ」


 俺はインベントリから「転移魔法陣(長距離用)」を取り出した。

 行き先はランダム。ここではないどこかなら、どこでもいい。


「あばよ、都会の喧騒! 俺は真のスローライフを取り戻す旅に出る!」


「あ、こら待ちく……師匠ーーッ!!」


 エリザベートの静止を振り切り、俺は光の中に飛び込んだ。


 ◇ ◇ ◇


 シュンッ。

 転移の光が収まると、そこは見たこともない場所だった。


 潮の香り。波の音。

 目の前に広がっていたのは、見渡す限りの「大海原」と、ポツンと浮かぶ小さな「無人島」だった。


「……ここだ」


 俺は砂浜に降り立ち、大きく深呼吸した。

 人の気配はない。ビルもない。あるのは、白い砂浜と青い海、そしてヤシの木に似た植物だけ。


「最高だ……! ここなら、誰にも邪魔されずに素材集めができる!」


 俺はガッツポーズをした。

 しかし、俺はまだ気づいていなかった。

 この海域が、世界中の船乗りたちが恐れる「魔の三角海域トライアングル」の中心であり、深海には陸上とは比較にならない「S級海洋モンスター」たちがひしめいていることを。


 ピロン♪

 久しぶりに、あの懐かしい通知音が鳴った。


 【自動収集スキル:新エリア「絶海」を認識しました】

 【収集対象:クラーケンの吸盤、リヴァイアサンの鱗、人魚の涙……】


「お、いきなり大漁だな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ