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第42話 辺境で最強の道具屋は、今日も元気に営業中

 世界を救う「大掃除」から数ヶ月後。

 辺境の街・ベルクの森にある道具屋『隠れ家ヘヴン』は、今日も今日とて戦場のような賑わいを見せていた。


「おい、押すな! 俺が先だ!」

「どきなさい! エルフの女王である私が予約していたのよ!」

「フハハ! 我輩は魔王であるぞ! 優先席(VIP)に通さんか!」


 店の前には、人間、エルフ、ドワーフ、獣人、そして魔族までもが入り乱れた長蛇の列ができている。

 かつては「辺境のボロ屋」だったこの場所は、今や世界中の要人が集まる「世界の中心地」となっていた。


 カランカラン♪

 軽快なベルの音と共に、店の扉が開く。


「いらっしゃいませー! 本日も『隠れ家ヘヴン』へようこそ!」


 元気な声を上げたのは、この国の次期筆頭魔導師とも噂される公爵令嬢、エリザベートだ。

 彼女は真紅のドレスの上にエプロンをつけ、慣れた手つきで客を誘導している。


「あら、魔王様。腰痛の湿布なら在庫がございますわ。……あ、そちらの冒険者様、店内で剣を抜くなら『カゲロウ警備主任』が裏へご案内しますけれど?」

「ひっ! す、すいません!」


 裏口では、元最強の暗殺者・カゲロウが、不審者を瞬時に「処理(接客指導)」して戻ってくるところだった。


「店内清掃、完了。ホコリ一つ、ウイルス一つ残しません」

「ご注文の品をお持ちしました。重量500キロですが、ここに置きますね」


 店内を飛び回るのは、古代文明の遺産であるアンドロイド姉妹、ノアとイヴ。

 彼女たちの精密かつパワフルな働きのおかげで、数百人の客もスムーズに捌かれていく。


 そして、カウンターの特等席(専用ベッド)では。

 伝説の魔獣・フェンリルのフェルが、巨大なモフモフの体を丸めて昼寝をしていた。


「……むにゃ。主よ、あとで極上ステーキを頼むぞ……」

「はいはい、働いたらな」


 俺――アレンは、苦笑しながらフェルの頭を撫で、次々と舞い込む注文に対応していた。


「へい、特級ポーション一丁! お代はS級素材で!」

「そっちの『世界樹の杖』は、今ならフェルの抜け毛で作ったお守り付きだ!」


 インベントリから素材を取り出し、瞬時に錬成(作成)し、客に渡す。

 その光景は、もはや錬金術というより、繁盛している定食屋の厨房のようだ。


 ふと、店の隅のテーブルを見ると、見覚えのある黒髪の少年がコタツに入ってミカンを食べていた。

 世界の管理者、アドミンだ。


「……またサボりに来たのか?」

「サボりではない。『現地視察』だ。……ふぅ、やはりこのコタツは至高の領域テクスチャだ」


 神様すらも常連客にしてしまう、この店の魔力。

 俺はふと、かつての自分を思い出した。


 勇者パーティを追放され、雨の中で途方に暮れていたあの日。

 「役立たず」と罵られ、すべてを失ったと思っていた。


 でも、今はどうだ。


「師匠! ポーションの在庫が切れそうですわ! 追加をお願いします!」

「お父様、裏山でドラゴンが獲れました。今日のランチにしましょう」

「主よ、背中がかゆい。かけ」


 こんなにも騒がしくて、手のかかる、最高の仲間たちがいる。

 世界を救った英雄? 神を超える創造主?

 そんな肩書きはどうでもいい。


 俺は、ただの「道具屋の店主」だ。

 素材の声を聞き、客の笑顔(と悲鳴)を作る。それが俺の天職だ。


「……よし、やるか!」


 俺はエプロンの紐をキュッと締め直し、大きく息を吸い込んだ。

 待っている客たちの前で、俺は満面の笑みを浮かべる。


「さあ、なんでも言ってくれ! 伝説の聖剣から、夕飯の献立の相談まで! 辺境最強の道具屋、今日も元気に開店だ!!」


 「「「いらっしゃいませー!!!」」」


 仲間たちの声が重なり、青空に響き渡る。

 俺たちの楽しくて忙しい毎日は、これからもずっと続いていくのだ。


(完)

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