第27話 裏庭を掘っていたら、古代文明の最終兵器が出てきた件
魔王軍幹部の来店騒動から数日後。
『隠れ家』は定休日だった。
俺は久々の休日を満喫しようと、縁側でお茶を啜っていた。
庭では、フェル(巨大狼形態)が「ここ掘れワンワン」の勢いで、猛烈な勢いで地面を掘り返している。
「おいフェル、あまり深く掘るなよ。温泉でも湧いたらどうするんだ」
「主よ、ここから『美味そうな魔力』の匂いがするのだ。骨ではない、もっと硬くて……冷たい匂いだ」
ガキンッ!!
鈍い金属音が響いた。
フェルが掘り当てたのは、土に埋もれた銀色の金属板だった。錆びひとつなく、鏡のように空を映している。
「……ミスリル? いや、オリハルコンか?」
「師匠、見てくださいまし! 文字が刻まれていますわ!」
洗濯物を干していたエリザベートが駆け寄ってくる。
金属板には、今の世界には存在しない幾何学的な紋様と、見覚えのある文字が光っていた。
【System Status: Sleep Mode】
「これ、俺のスキルウィンドウと同じ文字だ……」
俺が思わず手を触れた、その瞬間。
キュイイイン……! と低い駆動音が鳴り、金属板がスライドして、地下へと続く階段が現れた。
「遺跡……でしょうか? でも、こんなに綺麗な状態なんて」
「行ってみよう。俺のスキルの秘密が、ここにある気がする」
地下空間は、驚くほど広大だった。
壁も床も、継ぎ目のない白い金属で覆われている。松明も魔法も使っていないのに、天井自体が淡く発光していて昼間のように明るい。
「ここは……ダンジョンとは違いますわね。魔物の気配が全くしません」
「主よ、この壁、私の爪でも傷つかないぞ。何でできている?」
俺たちは長い回廊を抜け、最奥にある巨大な扉の前に立った。
扉には赤い光の帯が走っている。
『認証開始。生体IDを確認……』
無機質な女性の声が響いた。エリザベートが「誰ですの!?」と杖を構える。
『――確認完了。お帰りなさいませ、マスター・アレン。第001号管理施設、再起動します』
プシュウウウ……!
圧縮空気が抜ける音と共に、巨大な扉が開く。
その向こうに広がっていた光景に、俺たちは言葉を失った。
そこは、「倉庫」だった。
ただし、ただの倉庫ではない。
天井まで届くガラスのケースが、地平線の彼方まで無限に並んでいる。
その一つ一つの中に、見たこともない武器、防具、素材、アーティファクトが収められ、青い液体の中で眠っていた。
「こ、これは……『神殺しの槍』!? こっちは伝説の『賢者の石』!? 国宝級のアイテムが、山のように……!」
エリザベートが腰を抜かして座り込む。
俺は一つのコンソール(操作盤)に近づいた。
画面には、俺がいつも見ている【自動収集】のログが表示されている。
[収集対象:フェンリルの毛皮 → 転送完了]
[収集対象:世界樹の朝露 → 転送完了]
「……そうか。俺の【自動収集】スキルは、魔法じゃなかったんだ」
俺は理解した。
俺のスキルは、この古代施設への「アクセス権」そのものだったのだ。
世界中に散らばったナノマシンか何かが素材を回収し、この倉庫へ転送していた。俺が「インベントリ」だと思っていたのは、この施設のデータベースだったということか。
「主よ、あれを見ろ。一番奥に、何かデカいものがあるぞ」
フェルの声に顔を上げる。
無限の倉庫の中心に、ひときわ巨大なカプセルが鎮座していた。
そこには「素材」ではなく、「あるもの」が封印されていた。
それは――




