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第23話 「え、ポーションってこんなに不味かったっけ?」勇者パーティの凋落

 アレンが王立魔法学院で「伝説」を更新していた頃。

 王都から遠く離れた「嘆きの渓谷」ダンジョン中層にて、勇者アルヴィン率いるパーティは、泥沼の戦いを強いられていた。


「くそっ、硬い! なんでこんな雑魚モンスターの装甲が抜けないんだ!?」


 勇者アルヴィンが聖剣を振るうが、岩トカゲの表皮に弾かれて火花が散る。

 かつてなら一撃で切断できていたはずの敵だ。だが、今の彼の剣は刃こぼれし、輝きも鈍っている。


「アルヴィン、前衛が崩れます! 私の盾ももう限界だ!」

 重戦士のログが悲鳴を上げる。彼の自慢のミスリル盾には亀裂が入り、いつ砕けてもおかしくない状態だった。


「回復! おいマリアンヌ、早く回復魔法を!」

「無理よ! 魔力(MP)がもう尽きちゃったの! ポーションを飲みすぎて、お腹がタプタプで気持ち悪いわ!」


 聖女マリアンヌが青ざめた顔で叫ぶ。

 彼女の足元には、空になったポーションの瓶が散乱していた。

 市販の「中級ポーション」。一本あたり銀貨5枚もする高級品だが、アレンが作っていた「特製ドリンク(という名のS級ポーション)」に比べれば、ただの泥水同然だった。


 以前なら、アレンが戦闘の合間にサッと差し出す一杯のスープで、体力も魔力も装備の耐久値さえも全快していたのだ。

 彼らはそれを「当たり前」だと思っていた。「勇者の加護のおかげ」だと勘違いしていたのだ。


「おい、荷物持ち! 予備の剣を出せ!」

 アルヴィンが怒鳴る。

 アレンの代わりに雇われた新しいポーターの少年が、震えながら答えた。


「も、もうありません! 荷物が重すぎて、途中で捨ててこいって言ったじゃないですか!」

「役立たずがぁぁぁッ!!」


 ドォォォン!!

 岩トカゲの尾の一撃を受け、勇者一行はボロ雑巾のように壁に叩きつけられた。


 命からがら逃げ帰ったキャンプ地。

 焚き火を囲む空気は、葬式のように重かった。


 装備はボロボロ、財布の中身も補充アイテム代で空っぽ。

 夕食は、黒焦げになった干し肉と、泥のような味がするスープだけ。


「……マズい」

 アルヴィンが干し肉を地面に叩きつけた。

「なんでこんなに飯がマズいんだ! アレンがいた時は、ダンジョンの中でもビーフシチューが出てきたぞ!」


「装備のメンテナンスだってそうだわ。あいつが磨くと、なぜか剣が新品より切れ味がよくなった……」

「野営の結界もだ。あいつが石を置くだけで、魔物が寄ってこなかった……」


 沈黙が流れる。

 全員が認めたくなかった事実を、認めざるを得なかった。


 自分たちが強かったのではない。アレンが強すぎたのだ。

 アレンという「土台」があったからこそ、彼らは英雄として輝けていたのだと。


「……ねえ、アルヴィン」

 マリアンヌが縋るような目つきで言った。

「アレンを呼び戻しましょうよ。今ならまだ許してあげるわ」

「そ、そうだな! 俺たちは幼馴染だ。俺が頭を下げて『戻ってこい』と命令してやれば、あいつだって泣いて喜ぶはずだ」


 アルヴィンは歪んだ笑みを浮かべた。

 彼のプライドは、まだ現実を直視できていなかった。「アレンは自分たちに依存している」という妄想にしがみついていた。


「噂じゃ、あいつは王都にいるらしい。王様から呼び出されたとか何とか……」

「フン、どうせ嘘だろう。詐欺でも働いて捕まったんじゃないか? ちょうどいい、俺たちが身元引受人になって恩を売ってやろうぜ」


 彼らはまだ知らない。

 アレンが今や、国のトップさえ敬う「大先生」になっていることを。

 そして、自分たちの入店拒否ブラックリスト入りが、国レベルで徹底されていることを。


「行くぞ、王都へ! アレンを回収し、再び最強のパーティを復活させる!」


 勘違い勇者一行は、ボロボロの体を引きずり、王都への道を歩き出した。

 それが、自らの破滅への行進パレードになるとも知らずに。

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