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第17話 帝国の最終兵器『魔導巨神』が村を踏み潰しに来たが、俺にとっては「オリハルコンの塊」にしか見えなかった件

 飛竜部隊が花火で撃墜された翌日。

 ガレリア帝国の皇帝は、怒りで玉座の肘掛けを粉砕していた。


「おのれ……! 我が精鋭部隊を、祭りの見世物のように散らすとは!」


 皇帝のプライドはズタズタだった。

 こうなれば、もはやなりふり構っていられない。


「起動せよ! 地下格納庫に眠る、古代文明の遺産……『魔導巨神タイタン』を!」


 それは、帝国が数百年かけて発掘・修復した、全長50メートルを超える人型決戦兵器。

 装甲は魔法金属オリハルコン。主砲は山一つを消し飛ばす威力を持つ、正真正銘の化け物だ。


「あれを使えばリーゼ村はおろか、王国ごと焦土と化すだろう。……アレンよ、後悔するがいい!」


 


 ズゥゥゥゥゥ……ン。


 リーゼ村に、地獄の底から響くような地響きが届いた。

 昼時だというのに、太陽が遮られ、村が巨大な影に覆われる。


「な、なんだあれはァァァ!?」

「山が……動いている!?」


 村人たちが空を見上げ、絶望の悲鳴を上げた。

 そこには、雲を突き破って現れた、鋼鉄の巨人が立っていた。

 一歩踏み出すたびに森がひしゃげ、大地が揺れる。その威容はまさに「破壊神」そのものだった。


 『アレン雑貨店』の前にも、村人たちが逃げ込んできていた。


「アレン様! お逃げください! あんなもの、魔法も剣も通じません!」

「終わりだ……村はおしまいだぁ……!」


 パニックになる人々の中、俺はエプロン姿のまま店から出てきた。

 手には、昼飯の支度で使っていたフライパン(テフロン加工済み)を持っている。


「うわぁ、デカいな」


 俺は巨神を見上げた。

 確かにデカい。だが、俺の【鑑定眼】には、その巨体のステータスが丸見えだった。


【対象:魔導巨神(古代兵器)】


構成素材: オリハルコン(純度98%)、ミスリル配線、古代魔導コア

状態: 整備不良(油切れ)、ネジの緩み多数


「……へえ。全身オリハルコン製か。ちょうど在庫が切れてたんだよな」


 俺は口元を緩めた。

 オリハルコンは、神話級の武器や、熱伝導率最高の調理器具を作るのに欠かせない超レア素材だ。それが向こうから歩いてきてくれたのだ。


『ガハハハ! 見ろ、虫ケラどもが逃げ惑っておるわ!』


 巨神の頭部にあるコクピットから、拡声魔法で将軍の声が響いた。


『この機体の装甲は無敵! 貴様らの貧弱な魔法など蚊ほども効かん! さあ、この足でプチリと踏み潰して……』


 巨神が巨大な足を振り上げ、店の上空へと影を落とす。

 リリアとクロが悲鳴を上げ、フェルが迎撃しようと飛び出した、その時。


 俺はフライパンを振り上げ、静かにスキルを発動した。


「――素材としては一級品だけど、形が悪いな。【解体】」


 カッ!!!!


 俺の指先から放たれた光が、巨神を包み込む。

 俺のスキルは、本来「倒した魔物を素材にする」ためのものだが、レベルアップにより「構造を理解した無機物」なら即座に解体できるようになったのだ。


『な、なんだ!? 機体が……光に……!?』


 将軍の狼狽する声。

 次の瞬間、物理法則が仕事を放棄した。


 バラララララッ!!


 全長50メートルの巨体が、まるでブロック玩具のように一瞬で分解されたのだ。

 外装のオリハルコンはインゴット(延べ棒)に。

 内部の配線は綺麗なコイルに。

 動力炉のコアは宝石のような球体に。


 それぞれが種類ごとに整頓され、キラキラと輝きながら俺のインベントリ(亜空間)へと吸い込まれていく。


『ば、馬鹿なァァァァァ!? 俺の最強兵器がァァァァ!?』


 装甲を失った将軍は、コクピットの椅子に座ったまま、空中に放り出された。

 一瞬の静止。

 そして、重力に従って落下を開始する。


「うわぁぁぁぁぁッ!!」

「おっと、危ない」


 俺は落下してきた将軍おっさんを、念のため魔法のクッションで受け止めた。

 将軍は目を白黒させ、何もなくなった空と、俺の手元のリストを見比べている。


「……あ、ありえん……。帝国の予算10年分をつぎ込んだ巨神が……一瞬で……資源ゴミに……?」

「ゴミじゃないですよ。立派な資源です」


 俺はニッコリと笑い、回収したての『オリハルコンのインゴット』を取り出した。


「おかげで、ずっと作りたかった『究極のフライパン』が作れそうです。ありがとう、帝国さん」


 村人たち、そしてリリアとフェルたちは、あんぐりと口を開けてその光景を見ていた。

 最強の兵器が、ただの「宅配便」扱いされて終わった瞬間だった。


 


 その後。

 捕虜となった将軍は、リリアによって尋問……もとい、説教部屋へと連行された。

 俺はオリハルコン製のフライパンでステーキを焼き、みんなに振る舞った。

 熱伝導率が最高なので、肉汁を逃さず最高の焼き上がりになった。


 一方、遠隔通信で一部始終を見ていた皇帝は。

 「……嘘だ……嘘だ……」と呟きながら、玉座の裏に引きこもってしまったという。

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