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第15話 遠くて店に行けない? なら『魔法の通販カタログ』を作って、当日配送(ウーバー)してやろう

『アレン雑貨店』の名声は、国王の公認を得たことで爆発的に広がっていた。

 だが、問題もあった。


「主よ、最近、店の前に行列ができすぎて邪魔だぞ。昼寝もできん」

「アレン様、王都からの注文が多すぎて、商品の補充が追いつきませんわ……」


 フェルとリリアがぐったりとしている。

 リーゼ村は辺境だ。客はわざわざ馬車で何日もかけてやってくる。そのせいで村の宿はパンクし、店の周りは大混雑。

 スローライフとは程遠い「繁忙期」が続いていた。


「うーん、これはいかんな。客足を減らしつつ、売上を維持する方法が必要だ」


 俺は腕組みをして考え、一つの結論に至った。


「よし、『通信販売(通販)』を始めよう」

「ツーハン? なんですのそれ?」


 リリアが首を傾げる。

 俺はインベントリから、薄い石板を取り出した。

 『遠見の水晶』と『転移魔法陣』を組み込んで作った、名付けて『マジック・タブレット(カタログ版)』だ。


「これを見ろ。石板に商品の絵が映ってるだろ? 欲しい商品の絵を指で押して、指定の場所に代金を置く。すると……」


 俺が実演してみせる。

 石板の『ポーション』の絵をタップし、銅貨を置く。

 シュンッ!

 銅貨が消え、代わりに手元にポーションが現れた。


「「おおおおっ!?」」

「空間転移の応用だよ。これなら、客は家にいながら買い物ができるし、店に来る必要もない」


 俺はニヤリと笑った。

 在庫管理は俺の【自動収集】の派生スキル【自動配送】で行う。俺の感知範囲(今はレベルアップして国全土まで広がっている)なら、どこへでも0秒配送が可能だ。




 数日後。

 王都の冒険者ギルドに、一枚の石板が設置された。


「なんだこれ? 『アレン・アマゾン』?」

「欲しいものを押すだけで届くって? 詐欺じゃねえの?」


 半信半疑の冒険者の一人が、試しに『回復薬』を注文してみた。

 次の瞬間。


 *ポンッ!*


 虚空から小包が現れ、冒険者の手元に落下した。


「う、うわあああっ!? 本当に届いた!」

「すげえ! 店まで行かなくていいのか!」

「おい、この『日替わり弁当(大盛り)』も頼めるのか!?」


 騒ぎは瞬く間に広がった。

 戦場にいる騎士が「矢が尽きた!」と注文すれば、即座に矢の雨が届く。

 怪我をした旅人がその場でポーションを取り寄せる。

 貴族の夫人が、遠方のスイーツをお茶会に取り寄せる。


 アレンの『魔法通販』は、この世界の物流概念を根底から覆してしまった。




 一方、アレン雑貨店。


「ニャニャニャッ! 注文が止まらないニャ! 猫の手も借りたいってこのことかニャ!?」


 クロが猛烈なスピードで伝票を捌いている(実際は肉球スタンプを押しているだけだが)。

 リリアは売上計算に追われ、目が回っていた。


「あ、アレン様ぁ! 本日の売上、国家予算並みになってますわ! 金貨の保管場所がありません!」

「裏の倉庫に放り込んどいてくれ。俺は今、追加の『ハンバーグ弁当』を量産中だ!」


 俺は厨房で、スキル【並列調理】をフル稼働させていた。

 スローライフのために導入した通販だったが、結果として世界一忙しい店になってしまった気がする。


 だが、俺たちの作る料理やアイテムが、世界中の人々を救い、笑顔にしている。

 モニター越しに見える客たちの喜ぶ顔を見れば、悪い気はしなかった。




 しかし。

 この革命的なシステムが、最悪の形で注目を集めてしまう。

 ガレリア帝国、皇帝の間。


「……報告します。王国にて、『物資が瞬時に届く』魔法技術が実用化された模様です」


 密偵の言葉に、皇帝が立ち上がった。


「なんだと? 補給線(兵站)を無視して、物資を前線に送り込めるということか?」


 戦争において、補給は命だ。

 食料や武器を、距離を無視して送り込める能力。それがもし軍事利用されれば、帝国の優位性は完全に失われる。


「……看過できん。アレンという男、ただの職人ではないな」


 皇帝の目に、冷酷な決意が宿る。


「『黒猫』からの連絡も途絶えた。おそらく寝返ったか、消されたか……。もはや小細工は不要」

「陛下、まさか……」

「全軍に通達せよ。――これより、王国への侵攻を開始する」


 皇帝が剣を抜いた。


「アレンの店を制圧し、その技術を我が物とするのだ。逆らう者は、村ごと焼き払え!」


 便利な通販生活の裏で、世界大戦の足音が近づいていた。

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