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第1話 役立たずと罵られ勇者パーティーを追放された俺、実は【自動収集】スキルでS級素材を無限回収していた件

「アレン、お前は今日限りでクビだ」


 王都でも指折りの高級宿屋『金の獅子亭』。

 その一角にある円卓で、勇者レオンの冷淡な声が響いた。


 夕食時で賑わっていた店内の喧騒が、まるで水を打ったように静まり返る。

 俺、アレンは手にしたエールジョッキをゆっくりとテーブルに置いた。泡が弾ける音さえ聞こえそうな静寂の中、俺は目の前の幼馴染を見据えた。


「……クビ、ですか?」


「ああ。悪いが決定事項だ」


 レオンは長い金髪をかき上げ、まるで汚いものを見るような目で俺を見る。

 その隣では、聖女マリアが困ったように眉を下げていたが、その瞳の奥には隠しきれない侮蔑の色が浮かんでいた。向かいに座る魔導師のガイルに至っては、興味なさそうに赤ワインのグラスを揺らしている。


「気づいてないと思ったか? お前のスキル【自動収集オート・コレクト】なんて、この先の戦いじゃ何の役にも立たないゴミスキルだ。俺たち『光の剣』は魔王討伐を目指すSランクパーティーだぞ? 戦闘力皆無の荷物持ち(ポーター)を養う余裕はない」


「……戦闘力皆無、ですか」


「そうだ。お前がちまちま拾ってくる薬草や石ころなんて、市場で買えばいい。俺たちはもう十分稼いでいるんだ」


 レオンがテーブルに革袋を放り投げる。

 じゃらり、と重い金属音がした。


「手切れ金だ。金貨10枚入ってる。田舎に帰るなり、野垂れ死ぬなり好きにしろ」


 俺は袋には手を伸ばさず、深いため息を飲み込んだ。


 ……そうか。彼らには何も見えていなかったのか。


 俺の固有スキル【自動収集】。

 彼らはこれを「近くの所有者のいないゴミを拾うだけのスキル」と馬鹿にしていた。

 だが、その真価は『半径1キロ以内のドロップアイテムや自然素材を、レアリティに関係なく自動で亜空間に収納する』という規格外の性能だ。


 Sランクダンジョンの深層で、彼らが戦闘に夢中になっている間に放置された『竜王の牙』も、『賢者の石の欠片』も、『深淵の魔石』も。

 すべて俺が回収していた。


 それだけではない。

 彼らが身につけている最強装備――ミスリルの聖剣も、聖なる法衣も、魔力増幅の杖も。

 すべて俺が回収したS級素材を使い、夜なべして【錬金】スキルで作成・強化したものだ。


「でも、ポーションの補充や装備のメンテナンスは誰がやるんです? 僕がいなくなったら、深層ダンジョンでの補給はどうするつもりですか?」


「はっ! 雑用なんて誰でもできるだろうが。それに、俺たちの装備は最強だ。メンテナンスなんて必要ねえよ」


 ガイルが鼻で笑い、ワインを一気に煽る。


「アレン君、ごめんなさいね。あなたのレベルでは、もう私たちについてこれないの。足手まといなのよ」


 マリアが慈悲深い聖女の仮面を被ったまま、残酷な言葉を紡ぐ。


 限界だった。

 幼馴染だからと、影ながら支えてきた数年間。その全てが否定された瞬間だった。


「……分かりました」


 俺は椅子を引いて立ち上がった。


「パーティー追放の件、承諾します。金はいりません」


「ふん、殊勝な心がけだな。最後のプライドってやつか?」


「いいえ。その代わり――僕が貸与していた装備品とアイテムはすべて返還してもらいます。僕の魔力パスがつながっているアイテムは、契約解除と共に回収される仕様ですので」


「あ? 何をブツブツ言ってんだ。さっさと行け!」


 レオンが苛立ち紛れに手を振る。

 俺は静かに、スキルを発動させた。


「――【全回収】」


 シュンッ!


 その瞬間、世界が反転したかのような閃光が走る。


「うわっ!?」

「きゃああっ!?」

「な、なんだ!?」


 レオンたちが装備していた、白銀に輝くミスリルの聖剣。

 マリアが身に纏っていた、あらゆる魔法を防ぐ聖女の法衣。

 ガイルが自慢していた、大賢者の杖。

 そして、鞄に入っていた大量の特級ポーションやマジックアイテム。


 それら全てが光の粒子となってその場で消滅し――俺の亜空間収納インベントリへと吸い込まれた。


 後に残されたのは、あられもない姿の三人の男女。

 レオンはよれよれのパンツ一丁。マリアは薄い下着姿。ガイルに至っては、小汚いシャツ一枚だ。


「は……? 俺の剣が!? 鎧が!?」

「い、いやあああ! 私のローブが!! 見ないで!!」

「おい! 杖がないぞ!? 魔力が練れない!!」


 突然のストリップショーに、静まり返っていた店内が爆発的な笑いに包まれた。

 指を差して笑う客、顔を赤くして目を逸らす給仕。


「何の真似だアレン! 俺たちの装備をどこへやった!!」


 レオンが顔を真っ赤にして怒鳴り、テーブルを叩く。

 だが、武器も防具もない、ただレベルが高いだけの若造など、今の俺には脅威ですらない。


 俺は冷ややかな視線を一瞥だけくれた。


「それは『ゴミ』なんかじゃなくて、僕がS級素材から作った特注品ですよ。メンテナンス契約が切れたので回収しました。これからは新しい仲間と、自力で装備を揃えてくださいね」


「ま、待て! 返せ! このままじゃ外も歩けないだろうが!」


「知ったことではありませんね。ああ、言い忘れましたが」


 俺は出口へ向かいながら、背越しに告げた。


「僕のインベントリには、君たちが倒した魔物のドロップ品……『フェンリルの毛皮』や『世界樹の雫』なんかが999個以上ストックされています。これ、全部僕の所有権判定になってるんで」


「な……!? きゅ、999個だと……!?」


「その素材で作るポーションひとつで、城が買える価値があるそうです。それを湯水のように使っていたのは誰だったか……ま、今となってはどうでもいい話ですね」


「待て! アレン、待ってくれ! 話し合おう!」


 レオンの悲痛な叫びが聞こえたが、俺は振り返らなかった。


 店の扉を開けると、夜風が心地よく頬を撫でた。

 空には満月が輝いている。

 不思議と、胸のつかえが取れたような、これまでにない清々しさがあった。


(これからは、このスキルと素材を、自分のために使おう)


 俺の収納には、Sランクダンジョンで自動回収し続けた、国宝級のレア素材が山のように眠っている。これらがあれば、どんなアイテムだって作り放題だ。


 そうだ、都会の喧騒はもうこりごりだ。

 どっかの静かな辺境の地に行って、のんびりと店でも開こう。

 世界最高の品揃えを誇る、最強の道具屋を。

 

 これは、追放された荷物持ちが、世界経済を牛耳るほどの伝説の商人へと成り上がる、その最初の第一歩だった。

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