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悪役令嬢の曽祖母の妹 〜遠い親戚だけど一族の未来は譲れない〜  作者: 月野槐樹


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22/22

第22話  エピローグ 本編のヒロインは困惑する

私は、エイミー。男爵令嬢として、この世界に転生した。ある日、転生したことに気がついた瞬間、心臓が飛び跳ねるほど興奮した。


「ここは……『聖女の恋と魔王の影』の世界!名前と容姿を見て確信した。

私はヒロインだわ! 聖女になって、王子と勇者の間で揺れる逆ハーレム、待ってるわよ!」


前世の記憶が鮮やかで、ゲームのストーリーを完璧に覚えていた。聖獣との出会い、魔王復活の脅威、すべてが私の運命を輝かせるはずだった。内なる喜びが爆発し、胸が熱くなる。


「ついに、私の番! 特別な力で、世界を救い、愛を勝ち取るんだ……」


でも、現実は違った。学園生活が始まっても、聖獣の気配はなく、魔族の噂すら聞こえない。


「どうなってるの!? これじゃ、ただの普通の令嬢じゃない!」


聖女でもない、ただの男爵令嬢だから、王子殿下と接触する機会もない。

何度か、出会いイベントを再現しようと頑張ったんだけど、「おや、君が聖女の……」って王子殿下が気づく展開がないと、進展しないのよ。



叫びたくなるほど、苛立ちと失望が胸を埋め尽くす。内なる声が渦巻く。


ゲームでは聖獣と偶然出会う。その偶然が起きないか、休みの度に、郊外とかに出てみたけど、良い散歩コースになっただけだったわ。聖獣に出会えないと聖女になれないのに。


「聖女の力、発揮できないなんて……私の特別な運命、どこに行ったの? 転生した意味がないよ……」


夜毎、ベッドで天井を見つめ、涙が頰を伝う。期待が大きかった分、喪失感が心を蝕む。


小説版とか漫画版とか、私が展開を知らない世界の方だったのかしら……。

公爵令嬢も王子殿下の婚約者になっていない。婚約者候補とされているのが、侯爵家の令嬢で、私が公爵令嬢だと思っていた人物の家は、なぜか伯爵家だったわ。

以前は公爵家だったけど、貿易の交渉で国に損害をもたらしたのがキッカケで、だんだん評判が落ちていって、爵位を下げられたらしいの。

どうもその頃から、国の領土は小さくなっていっているらしい。北にあるノルデア王国というのが勢力を拡大しているんですって。戦争とかにはなっていないみたいだけど、ちょっと怖いわね。


そのせいか、貴族なのに、生活がパッとしない気がしているわ。芋とか茹でた肉とか硬いパンとかの生活なのよ。こんな時は料理無双!って思ったけど、柔らかいパンだとかお菓子だとか、マヨネーズだとかは既に発明されて出回っているんですって。高くて手にはいらないだけで。なかなか、思うようにならないわね。


貴族学園に入学して、王子殿下のことばかり気にしていたけど、ふと思い出した。

王子殿下には近づけないけど、勇者は?


大昔に勇者だった人の子孫だった人が、勇者になるはず。

そして、魔王討伐を通して、ヒロインとの交流を深めるの。

だけど、ヒロインは、王子殿下と勇者両方の間で心が揺れてしまうのよ。


それなのに、勇者らしき人が見つからない。

調べてみたら、大昔に活躍した勇者のことが書かれた本というのは確かにあって、平民だった勇者は功績によって貴族となったって書かれていたわ。

でも、貴族になったっていう勇者の家も見つけられないのよ。


やっぱり、アナザーストーリーの世界なのかなぁ。


「……もし聖女だったら……」


時々そんな思いが、夜の闇に溶けていく。


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