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悪役令嬢の曽祖母の妹 〜遠い親戚だけど一族の未来は譲れない〜  作者: 月野槐樹


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第20話 魔王誕生

よく見ると、祭壇の前に魔法陣のような丸い円が床に刻まれていて、穴の広がりは円の内側で止まった。

真っ暗な穴を、スターリー一家も魔族もしばらく息を飲んで見つめていた。


「……はっ……!ジャンヌ! 死ぬな!死なないでくれ!」

「……レ……レンドール兄様……。ランスアールお兄様は……」

「無理に喋るな! ううう……」


青年はジャンヌと呼ばれた少女を抱き寄せると、くぐもった声で啜り泣き、それから顔を上げて、スターリー一家を睨みつけた。


「お前達のせいだ!お前達人族のせいで、妹が、妹が……!」


泣き叫ぶように言う青年の声に、アイナはギュッと拳を握りしめた。決意した顔をして家族を見回す。


「ねえ……。助けたいの……」

「……良いだろう」

「思ったとおりにすれば良いわ」

「何かあっても私が守るから」

「それで良いと思う」

「キャン……」

「ミュー……」


家族とフリードの同意を得て、従魔達も賛成してくれ、アイナはコクンと頷いた。

改めて青年達の方を向き直り、掌を少女に向けた。


「な!何を……!」

「エクストラ・スーパー・ハイヒール!!!」


パアッと眩い光がアイナの掌から放たれた。同時に白っぽい霧がキラキラと輝きながら少女を包み込んだ。


光が完全に消えた時、ジャンヌと呼ばれた魔族の少女の傷は綺麗に消えていた。


「……ジャ、ジャンヌ?」

「……あ……、痛みが消えた……?私、もしかして死んだの?」

「死んでないよ、ジャンヌ! 死んでない。……ええ?」


眩しい光で毒気が抜けたような顔をした青年は、少女が目を開けたのを見て安堵すると共に、困惑していた。


ズズズ


その時、穴の奥底で、地割れのような音が聞こえてきた。


「は!魔王が!」


マリナが真っ先に穴の淵に立った。


「マリナ!」

「お姉様!」

「決めたのよ!家族を守るって!」

「それは皆一緒だ!」


覚悟を決めた表情でお互い見つめ合うと、同時に頷いて、深淵の穴の中に飛び込んだ。


「真っ暗ー!! そうだ!光を! エルイーディー!!!」


アイナが叫ぶとパッと穴の中が照らされた。穴の底が見えたので風魔法で身体を浮かすようにして、体勢を整えて穴の最深部に降り立った。そこは横穴が空いていて、どうやらダンジョンのようだった。横穴の手前に赤黒い沼みたいなものがあり、ぼこぼこと不気味な音を立てていた。

スターリー一家は身構える。


「モフモフちゃん!結界を張って!」

「ミュー!」


モフモフは気合いの入った返事をして、沼を覆うようにドーム状の結界を作り出した。


「え? そっち?」

「ミュー?」


アイナのイメージでは各自の盾となるような形で結界を張ってもらおうと思ったのだ。しかしモフモフは、アイナが沼を睨みつけていたから、そちらを結界で覆ってしまったのだ。


「思ったのと違うけど……」

「これはこれで、アリかも。ねえ!こちらからの攻撃は入らないの?」


マリナが右手に魔力を集めながら言った。


「モフモフちゃん! 結界の中にも攻撃魔法が効くようにしたい! あ、待って! 転移を使えば……」


アイナはモフモフを抱きしめて、詳細なイメージを伝えることにした。


「結界の中と外に転移陣を作って、こっちからの攻撃を転送するようにしたのよ!」

「ミュー!」


沼を覆う結界のドームの横に、結界でできた壁のようなものを作り上げてアイナは説明をした。モフモフもやり切った様子だ。


「水魔法を放つでしょ!ほらっ」


結界の壁に水魔法を放つとドームの中に水が噴き出ていく。

マリナが一歩踏み出した。


「やってみる!」


マリナが特大の火魔法を結界の壁に向かって放った。


ゴオオオオオ!


結界のドームの中が炎でいっぱいになった。


「焼き尽くす!」


自身が放った炎の輝きがマリナの頬を照らし、決意を固めた瞳を赤く染めた。



『……来るなら出来上がってからにするが良いと言ったであろうに……』


スターリー一家は、結界のドームの中に変わるがわる攻撃を続けた。どのくらい時間が経過したか分からないが、やがて沼からワニのようなものが這い出てきて、コロッと横倒しに倒れた。


「倒したの?」

「え?まさか、あれが魔王……?」


ワニのようなものが倒れても、様子を見るために、しばらく攻撃を続け、何も変化がないことを確認してから、結界を解いた。


すると、聞き覚えがあるような声が聞こえてきた。


「え?もしかして、女神ルミナ様? もしかしてここを作ったのはルミナ様なのですか?」

「わたくしではない……。闇の神が言葉を失っておる。

 ここは、もっと先の時間の為に、ゆっくりと製作をしていたようだ」

「あああ……。もしかして、まさかの『準備中』……?」



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