第2話 悪役令嬢の先祖一家
内なる声が渦巻く。喜び? 否、恐怖だ。
ゲームのストーリーを思い出す。
姉の子孫であるレオーナは第二王子の婚約者候補となるが、格上の公爵家の令嬢ジュディが出てくるとあっという間に取って代わられた。「婚約者候補」という肩書きを持つ期間はほんの僅かだった。公爵令嬢ジュディがあっという間に第二王子の「婚約者」として発表されたのだ。レオーナは、ジュディの取り巻きに甘んじた。
しかし、第二王子とジュディが貴族学園に入学したタイミングに同時に聖女エイミーも学園に入学してきた。聖女エイミーは、男爵令嬢ではあったが高い治癒魔法の力を持っているとして教会に認められた存在だった。
第二王子とエイミーが学園内で出会うとあっという間にその距離は縮まった。
「婚約者のいる男性に対して親しくし過ぎですわ」
ジュディは取り巻き達をゾロゾロと引き連れて、エイミーに苦言を呈した。また、第二王子に対しても、定期的なお茶会を欠席したり、学園内で交流を持つ機会を作ってくれようとしないことに対して、訴え出たが、聞く耳を持ってもられなかった。
最終的に、学園の卒業パーティで、嫉妬からエイミーに嫌がらせをしたとして断罪され、取り巻き達も連座で処罰されてしまう。レオーナの実家もその責任を問わされ、取り潰しとなってしまうのだ。
レオーナの末路を思い浮かべ、アイナは震えた。
冷遇される幼少期、王子の婚約者候補としての期待と失望、公爵令嬢の陰謀、そして断罪。家系の崩壊、国外追放。遠い子孫の話とはいえ、血の繋がりが心を痛める。
「私には全く関係がないわけではないけれど、本当に遠い親戚レベルだし……。
未来がどうなるかは、その時になってみないとわからないんじゃない?
だけど……。お姉様の子孫なんだよね……。不幸になって欲しいわけじゃない。
助けられるなら助けたいけど……」
なんとかしたい、という気持ちもないことはないのだ、 しかし、無理という気持ちになる。頭を抱えた。
「そんな力、私にはないよ。転生しただけなのに……」
マリナは、家族の中心に立つ存在だった。肖像画の彼女は、ただ美しく描かれているだけではない。内面では、幼少期の厳しい教育が、彼女の心に鋼のような強さを刻み込んでいた。父の勇者パーティーの一員としての栄光を背負い、伯爵家を継ぐプレッシャーが、彼女を苛烈にさせた。マリナ自身、時折鏡の前で独り呟く。
「弱さは許されない。家族を守るためなら、何でもする」
妹のアイナを可愛がりながらも、厳しく接するのは、愛ゆえの防衛本能。心の奥底で、孤独な戦いを続けていた。
父は、勇者パーティーの一員としての過去を背負う男だった。外見は穏やかだが、内面では魔族との戦いの記憶が、夜毎に悪夢として蘇る。
「あの時、仲間を失った痛み……二度と、家族にそんな思いをさせない」
伯爵家を維持する重責が、心を蝕むが、娘たちへの愛が支えだった。マリナに家を継がせるのは、彼女の強さを信じてのこと。内なる声が囁く。「お前なら、乗り越えられるはずだ」
母は、家族の静かな支柱だった。穏やかな笑顔の裏で、夫の過去の傷を心配し、娘たちの成長を見守る日々。内面では、勇者の仲間としての夫の不在が多かった結婚生活を振り返り、心に小さな棘が残る。
「あの戦いが、夫を変えた……でも、家族の幸せのためなら、耐えられる」
娘たちを優しく抱きしめる時、内なる温かさが溢れ、孤独を癒す。
「アイナとマリナが、幸せなら、それでいい」




