第15話 モフモフ
フリードは根気良くシャドウウルフの子供の治癒を続け、ついにシャドウウルフの子供の傷は完治した。そしてその頃には、すっかりフリードに懐いていて、問題なくテイムに成功した。
「名前は、そうだな……。シャドにするか」
「キャン!」
シャドはキャンキャン吠えながら、嬉しそうにフリードの周りを走り回った。
「ほぼ、ペットよね。いいなぁ……。モフモフ……」
アイナはちょっと羨ましげにフリードがシャドを撫でる様子を眺めていた。普通のペットなら、自分も撫でさせてもらいに行くのだが、テイムしたばかりなのを考慮して、遠慮していた。
「撫でてみる?」
フリードがシャドを抱えて近づいてきた。
「え? いいの? テイムしたばかりだと、関係性が不安定とかって話じゃなかったの?」
「一緒に旅する人達のことは、ちゃんと仲間だと認識しておいてもらわないといけないからさ」
「確かにそうね……。わぁ、モフモフ!」
フリードに勧められたので、シャドの毛皮に手を伸ばした。シャドウウルフだけあって、表面がヒンヤリとした毛皮だった。アイナが撫でるとシャドが満足げに目を細めた。
「可愛い……。私も従魔が欲しいなぁ」
「機会があったらテイムを試してみたら? 従魔が居れば、そのうち戦闘の補佐とか伝令とか、役に立つと思うんだ」
「そうね。試してみたい」
フリードの父である勇者ジークは何体もの従魔を従えていたという。その影響からか、フリードは最初からテイムスキルを持っていた。
だが、小さい魔獣や弱っている魔獣から始めるなどすれば、テイムスキルは芽生える可能性が高いと勇者ジークから教わっていた。
フリードからテイムの説明を受けて、アイナはテイムできそうな小さい魔獣を探すようになった。狩りでは普通に魔獣を倒すが、子連れだったりしないかなど、周囲をキョロキョロと見回していた。
森の中に集落を作ったオーガの討伐依頼をこなした帰り道、アイナは小さい白い毛玉のようなものを見つけた。
「あれって、何かの魔獣の子かな?」
いけるかも!
テイムの対象を探していたアイナは、反射的に近づいて行った。
「あ、ちょっと!アイナ!」
「もっと慎重に!」
家族はアイナを制止する声がけをしながら、いざという時のために身構える。一家はすでにもう少しで銀級にランクアップする冒険者。アイナは膨大な魔力と魔法スキルを持っているし、多少のことなら身を守る力があることはわかっている。
だから、もしも戦闘にでもなったらサポートするか、と言う気持ちで見守っていた。
「モフモフちゃん!」
アイナが声をかけると、白い毛玉がピクリと動き、ピョンとアイナから遠ざかるように飛んだ。あ、警戒させたか、とアイナはしゃがんで身を低くした。
「モフモフちゃん、どこから来たの?」
「モフモフちゃん、一人?」
「ねえ、ちょっとお茶しない?」
言っているセリフがだんだんナンパする人みたいになっていると、アイナは自分で思った。ふと思いつきで、少し前に討伐した魔獣の触覚を取り出した。チョウチンアンコウの提灯みたいに先端に光ものがぶら下がっているのだ。
討伐証明部位ではないが魔力を込めておくと、光るので売れるのじゃないかと取っておいたのだ。
ブンブン
「!」
ブンブン
触覚を白い毛玉の目の前で揺らすと、興味を示すような反応があった。
ブンブン
パシッ
白い毛玉が触覚の先端部位に飛びついた。よく見ると毛玉の中から小さい前足を出して触覚を掴んでいる。掴んだ部位がパーっと光り輝く。魔力に反応したのだろう。
「釣れた!」
しばらく遊んで、白い毛玉の警戒心が薄れた頃に、そっと近づいていって撫でたら、白い毛玉が光り輝いた。




