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悪役令嬢の曽祖母の妹 〜遠い親戚だけど一族の未来は譲れない〜  作者: 月野槐樹


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第13話 転移スキル

「ねえ。みんなのスキルに『転移』って出てるのって持っているかどうかにy、気づいてた?」

「うん……。ちょっと気になってた」


みんなのステータス画面を確認した結果、共通してあるのは、光魔法と水魔法を持っていることと、スキルに「転移」という項目があることだった。

光魔法と水魔法は、アイナには「特大」と付いていたが、それ以外の者達は、もともとその魔法を持っているかどうかによって、ランクが違うようだった。

だが、希少なはずの光魔法を全員が手にしたのは、光の女神ルミナに会ったことが原因だろうと想像できた。


そして、光魔法にも水魔法にも関係なさそうな「転移」というスキルが全員についていた。父曰く、おそらくダンジョンの初クリア特典だろうということだ。

父の知識によると、「転移」というスキルは空間魔法の一種で任意の場所に移動できるスキルだということだ。だが、実際に保有しているものは少なく、情報はあまりない。スキルを使用すると膨大な魔力を消費すると言われているのだとか。


「試してみて良い?」

「ダメだ!魔力の消費が激しいんだぞ!何かあったらどうするんだ」


アイナが転移を試そうとしたら、父が反対をした。でもアイナは納得できない。

すかさずステータス画面を表示した。


「見て。私の魔力。女神様の加護のせいだと思うけど、すごく多いでしょ?」

「……それでも、転移先に失敗して岩の中とかに転移したらどうするんだ」

「何にもない平原とかで、検証してみるのはどう?」

「……それなら、俺が試す!」


「転移」というスキルの名前しかわかっておらず、使用方法もわからないので、父が懸念するように想定外の場所に転移することもあるかもしれない。アイナもそれは心配ないとは言い切れず、結局、近隣に山や岩などが何もない平原に行って、父が近距離での転移を試してみることにした。使用前後でステータス画面を確認すれば、魔力の消費量なども検証ができる。


「転移!」


呪文などもよくわからず、とりあえず平原に目印になる大きめの石を二つ置いて、もう一つの石の上に移動することをイメージして「転移」と叫んだ。

フッと父の姿が見えなくなったと思ったら、三メートル隣のもう一つの石の上に座り込んでいた。


アイナ達が心配して駆け寄る。


「お父様!大丈夫ですか?」

「魔力不足ですか?」

「早く魔力ポーションを!」


アイナ達が父を囲んで心配そうに声をかけると、座り込んでいた父がゆっくりと片手を上げた。


「……いや、魔力不足ではない気がする……。ちょっと待ってくれ……。ステータスオープン……」


力無い声で父が唱えて表示されたステータス画面では、確かに魔力の消費はあるようだったが、元々魔力量の多い父には十分な魔力が残っているように見えた。


「本当ですね。魔力不足ではないみたい……」

「状態に『転移酔い』って書かれていますわ」

「それだ……!」


父曰く、恐ろしく早い馬車から振り落とされた時のような、強い力で振り回されるような感覚だったという。


「転移すると必ず『転移酔い』になるということかしら」

「わからない。検証してみないと」


娘や妻には無理をさせたがらないが、父は結構、検証好きである。

同じ距離や違う距離で魔力量の消費が違うか、目視で見えた場所、見ていない場所に転移できるか、転移酔いの状態は変わるかなど、魔力に余裕があるだけ検証をした。

父が魔力回復の為に休んでいる間には、フリードが、検証の続きの役を買って出た。


フリードだって勇者の息子だ。魔力はそれなりに多いのだ。


結果として、転移で消費する魔力量は距離によって違うこと、転移酔いは、転移を何度も繰り返していくと慣れで、和らいでくるということが分かった。さらに、目視できる場所には問題なく転移ができ、直接見ていない場所では、多少ブレがあるということがわかった。背を向けて見ないようにしながら、転移を試みたところ、目的の印の位置から数メートル外れることが多かったのだ。


「……そろそろ私も転移を試してみたいんだけど」

「私も!」


父とフリードが転移の検証をしているのをじっと見守っていたマリナとアイナは、二人が休んでいる時についに我慢できなくなって自分達もやると言い出した。


「いや、しかし……。まだ検証は十分とは言えない……」


「転移酔いが慣れで解消されるなら、慣れた方が良いでしょ? いざという時に全員転移ができた方が危険を回避できるじゃない」


マリナの熱心な説得により、父はマリナ達も検証に参加することに同意した。

どうせ転移を試すなら平原にいるうちに、練習をした方が良いと考えたのだ。


「あー。でも、二人同時は、勘弁してくれ。全員魔力不足なんて状態の時に、もしも魔獣がやってきたりしたら危険だ。せめて俺の魔力が回復してきてからにしてくれ」


父はそう言って、魔法鞄から魔力ポーションを取り出すとぐいっと煽って顰めっ面をした。


「……わかったわ……。アイナ、あなたが先に試しなさい。私は何かあった時のために控えておくから」


これまでの検証時には父は魔力ポーションを口にしなかったのに、マリナとアイナが転移を試すと言い出したら、魔力ポーションを飲んだ。娘達を守る為にそうしたのだと、マリナは気がついた。

父の魔力が回復しないうちに、自分も転移を試したいなどと言ってしまったからだと反省した。


「え? 私が先で良いの? お姉様は?」

「順番で良いのよ。まだ空は明るいし時間はタップリあるわ」


マリナがそう言って微笑むと、母がキャンプストーブを取り出した。


「お茶でも入れましょう」

「……ええ。椅子を出すわね!」


転移の検証の様子を眺めながら、ピクニックをすることになった。


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