鳥肉が食べたいなら卵から
1年ぶりに都会に住む友人が訪ねて来た。
此奴は半年から1〜2年毎に家に米を買いに来る。
少子化の影響で、宅配便どころか郵便局や新聞屋にも「配達出来ません」って言われるド田舎に住んでるんで、都会のお菓子や流行りの物をゴッソリと持って来てくれる此奴はありがたい存在。
だから此奴が来ると俺だけじゃ無く、カミさんや子供たちにオフクロにも歓迎される。
友人は乗って来たワゴン車から降り、はち切れんばかりにパンパンにお菓子などが入ったビニール袋を両手に数袋ずつにぶら下げて、敷地内を我が物顔で彷徨いている鳥たちを足で追い払いながら歩み寄って来た。
「ヤァ! 久しぶり、また米分けてくれ」
「オゥ、良いよ、大根と白菜くらいしか無いけど野菜も持って行け」
「良いのか? ネットとかで見ていると思うけど、今野菜がめちゃくちゃ高いから俺としては助かるんだけどね」
「自家用の野菜で、虫が付いていたり鴉や此奴らに突っつかれたりしていて売りもんにはならないから良いんだ」
俺は顎をしゃくって友人の足下を彷徨く鶏やアヒルやウズラを指し示しながら答えた。
友人は足下や周りを見渡しながら聞いて来る。
「エラく鳥がいるみたいだから卵も分けてくれるか?」
「悪いんだけど卵は分けられない」
「え、なんで?」
「裏に鳥小屋があるからそこで卵を失敬してみろ、理由が分かるから」
「なんだよ?」と友人はブツブツ言いながらも裏に向かって歩き出す。
数分後、裏で騒動が起こる。
ブギャーァァァー! (怒り狂った猫)
ぎゃあぁぁぁー! (人の悲鳴)
ゴケー! ギャアー!(怒り狂っ鳥たち)
叫び声が響き渡り、真っ青な顔の友人が逃げて来ると共に怒り狂った猫を先頭に鶏、アヒル、ウズラの大群が友人を追って来た。
友人は玄関の中に飛び込んで来て後ろ手で玄関の引き戸を閉め、叫んだ。
「な、なんだ! アレは?」
俺は玄関から左右に伸びる廊下の窓から外を見ながら答える。
「お前も知ってるだろうけど、家の飼い猫キャットフードより毎日鳥肉を食いたがるぐらいに鳥肉が好物だっただろう。
でも毎日鳥肉を買って来るのも煩わしいんで、農協で鶏やアヒルなどの有精卵を手に入れ、自分で温めて孵せって猫に抱卵させたんだ。
最初は涎を流しながら卵を抱いていたのに、卵が孵化したら情が湧いたのかヒヨコを育て始めたんだよ、オスなのにな。
だから其処にいる鳥たちは皆、その時のヒヨコやそのヒヨコたちの子や孫なんだ」
「じゃ、あの猫、鳥肉食うのやめたのか?」
「否、鳥肉は食ってるよ」
「やっぱり買って来るようになったのか?」
「それも違う、あれだけ鳥が群れているからヒヨコを狙って鴉や鳶が来るんだけどそいつらを逆に獲物にしている。
今じゃ1日に1羽は確実に捕らえているよ」
「それならそうと言ってくれよ!」
「言っても信じないだろ? お前だけじゃ無く、ご近所さんや農協で此の事を話しても誰も信じてくれなかったから実際に体験させる事にしたんだよ」