第9話: 「迫る真実」
王都に戻った俺たちは、早速国王に報告を行った。魔法陣の存在、そして黒装束の男について話すと、国王は眉をひそめ、深刻な表情を浮かべた。
「それが事実であれば、非常に由々しき問題だ。魔法陣を使って何かを企てている者がいるとすれば、放置するわけにはいかない」
その言葉にエリスが頷く。
「はい、魔法陣や黒装束の男についてさらに調査を進めるべきかと」
国王は考え込んだ後、俺に向かって言った。
「勇者よ、そなたもこの件の調査に協力してくれぬか?」
「……もちろん」
そう答えながら、心の中では舌打ちしていた。
(また厄介な任務かよ……。逃げ出すタイミングをますます失いそうだ)
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その日の夜、俺は王宮の部屋で独り作戦を練っていた。資金はそこそこ貯まったが、まだ完全に逃げ切れる自信がない。それに、あの黒装束の男の言葉がどうしても頭から離れない。
「異世界の力が必要……か」
俺は剣を手に取り、その刃をじっと見つめた。剣聖の力を使えば、この世界で生き抜くことは容易い。だが、その力を使えば使うほど、俺の正体が露見し、国に縛られる可能性が高まる。
(隠して逃げるか、力を解放してこの世界で戦い続けるか……どっちにしても厄介だ)
そんなことを考えていると、ノックの音が聞こえた。
「誰だ?」
「私です、エリスです」
扉を開けると、エリスが疲れた様子で立っていた。
「どうしたんだ、こんな時間に?」
「少しお話があります。お時間をいただけますか?」
部屋に入ったエリスは椅子に腰掛け、静かに口を開いた。
「勇者様、黒装束の男の言葉を覚えていますか?」
「ああ。『異世界の力が計画に必要』ってやつだろ?」
エリスは深く頷きながら言った。
「その言葉がどうしても引っかかります。そして、私なりにいろいろ調べてみたのですが、どうやらこの国だけではなく、他国でも似たような事件が起きているようなのです」
「他国でも?」
「はい。他国の勇者が召喚された直後に行方不明になったり、不自然な形で戦死したという報告があります。そして、その背後には必ず奇妙な魔法陣の痕跡が残されているのです」
俺はその話を聞き、嫌な予感がさらに強まった。
「つまり、俺だけじゃなくて、他の異世界人も何かに巻き込まれているってことか」
「ええ。そして、異世界から召喚された勇者の力が何かの目的に利用されている可能性が高い」
エリスは真剣な目で俺を見つめた。
「勇者様、もしこの事件の背後に大きな陰謀があるとすれば、私たちはそれを止めなければなりません。あなたの力が、そのために必要なのです」
「……俺の力、ね」
俺は剣を握りしめたまま、黙り込んだ。
(俺はただこの世界から抜け出したいだけだ。戦いたくなんかない。だけど、このまま放っておいたら、俺も他の勇者たちみたいに利用されるだけかもしれない)
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翌朝、俺たちは黒装束の男が残した手がかりをもとに、さらに調査を進めることになった。エリスの情報によると、王都から東にある廃村に、不審な動きがあるらしい。
「その村にはかつて、召喚魔法の研究をしていた魔法使いが住んでいたそうです。今は廃村になっていますが、何か手がかりがあるかもしれません」
エリスの説明を聞きながら、俺は再び剣を背負い、馬に乗り込んだ。
(とりあえず、廃村で何が起きているのか確かめるしかない。だけど、それが終わったら……本気で逃げる準備を始めるか)
心の中でそう決意しながら、俺たちは新たな目的地へと向かった。




