第8話: 「闇に潜む影」
翌朝、俺たちは森を出発し、王都へ向けて進むことになった。魔法陣の調査はある程度終わったものの、根本的な問題は何一つ解決していない。
「魔法陣の背後にいる者を突き止めるため、王都でさらなる調査を行います」
エリスはそう言いながら、次の行動計画をまとめていた。一方の俺は、早くも次の逃げ道を模索していた。
(王都に戻ったら、また別の任務が押し付けられるだろう。それまでに資金を整え、なんとか逃げる準備を進めないと)
そんなことを考えながら歩いていると、ふと妙な気配を感じた。
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「勇者様、どうされましたか?」
エリスが怪訝そうに振り返る。俺は周囲を見渡しながら答えた。
「いや、なんか変な感じがするんだ……。誰かに見られているような」
その言葉にエリスや騎士たちも警戒態勢に入る。
「周囲を調べます!」
騎士たちが散開して森を調べ始めた。俺も形だけ手伝うふりをして周りを見渡す。すると、少し離れた木陰に何かが動いた気がした。
(今のは……?)
気配を追って近づくと、そこには黒装束に身を包んだ一人の男がいた。
「誰だ!」
男は俺の声に反応すると、すぐさま森の奥へと逃げていく。
「待て!」
エリスの声が響き渡り、騎士たちが追いかけるが、男の動きは異常に速い。俺も仕方なく後を追うことにした。
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男を追っているうちに、いつの間にか森の奥深くまで入り込んでいた。気づけば周囲には誰もいない。
(くそ、これじゃ俺一人で追う羽目になるじゃないか……)
俺が苛立ちながら進んでいると、突然背後から声が聞こえた。
「やはり、あの魔法陣を調べに来たのですね」
振り返ると、例の黒装束の男がそこに立っていた。
「お前は何者だ? 魔法陣を作ったのはお前か?」
男は薄く笑いながら答える。
「私はただの手先にすぎません。本当の目的を知るには、あなたのような存在がもっと多くの情報を持ち帰る必要があるのです」
「……俺のような存在?」
その言葉に嫌な予感がした。
「そうです。異世界から召喚されたあなたのような存在は、我々にとって非常に重要な材料です。あなたの力……いえ、異世界の力は、次の計画に必要不可欠なのです」
「……ふざけるな」
俺は咄嗟に剣を構えた。男は悠然とした態度を崩さない。
「焦ることはありません、勇者様。我々はまだあなたを敵に回すつもりはない。ただ、時が来れば、あなたも理解することになるでしょう」
そう言うと、男は後方に煙玉を投げつけ、視界が一瞬で真っ白になった。
「待て!」
煙が晴れた頃には、男の姿は跡形もなく消えていた。
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その後、俺は森を抜けてエリスたちと合流した。
「勇者様、大丈夫ですか? あの男は……?」
「逃げられたよ。何者かもわからないが、魔法陣について何か知っているのは間違いない」
俺は適当に話を合わせながら、心の中で新たな疑問を抱えていた。
(あの男が言っていたこと……『異世界の力が計画に必要』ってのはどういう意味だ? 俺はただここから逃げたいだけなのに、なんでこんな厄介なことに巻き込まれるんだよ)
エリスは険しい顔で頷き、騎士たちに命じた。
「王都に戻ったら、急いで報告をまとめましょう。そして、より詳細な調査を開始します」
俺は無言で頷きつつ、自分が異世界召喚された理由が、想像以上に深い問題を孕んでいることを感じずにはいられなかった。
(このままじゃ、逃げるどころかもっと面倒なことになるかもしれないな……)
だが、俺にはまだ切り札がある。剣聖と賢者の力――本当の力を隠しながら、次の動きを考えることにした。




