第46話 封印の謎を追って
王城の廊下を歩きながら、俺は考え込んでいた。昨夜の封印の間での出来事、黒装束の男の言葉――「封印の奥に眠るもの、それが何か知っているのか?」
俺は知らない。知るべきなのか? それすらもわからない。
「勇者様、王の間はすぐそこです」
エリスの声に我に返る。
「ああ」
王の間の扉が開かれ、俺たちは進んだ。王はすでに報告を受けていたのか、厳しい表情で俺たちを迎えた。
「勇者よ、封印の間での出来事を詳しく話してくれ」
「はい」
俺は昨夜のことを話した。黒装束の男が侵入し、奇妙な紋様を残し、封印の奥に何があるのかと問いかけてきたこと。そして、何も知らない俺は言葉に詰まったことを。
王は腕を組み、深くため息をついた。
「……やはり、封印の秘密を狙う者が動き出したか」
「王様、封印の奥には何があるのですか?」
俺が問うと、王はゆっくりと頷いた。
「封印の奥に何があるのか、それを完全に知る者は少ない。だが、伝承によれば、そこには“古き神々の力”が眠っていると言われている」
「古き神々の力……?」
「遥か昔、この大陸に破滅をもたらした存在がいた。それを封じるために、勇者と賢者たちが結集し、この封印を作ったのだ」
「破滅をもたらした存在……それって、魔王とかそういう類のものですか?」
王はゆっくりと首を振る。
「魔王ではない。魔王ですら恐れる存在だ」
「……マジかよ」
「封印が解ければ、その力が解放される。そうなれば、世界は再び混乱の時代に戻るだろう」
エリスが顔を曇らせた。
「では、黒装束の男たちはその力を狙っているのでしょうか?」
「可能性は高い。しかし、まだ確証はない」
俺は剣の柄を握りしめる。
「だったら、調べるしかねぇな」
王は俺を見つめた。
「封印の奥にあるものを知りたいというのか?」
「何も知らずに選択なんてできねぇ。調べられるなら調べるべきだ」
王はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。
「……わかった。城の書庫に封印に関する古文書がある。許可を出そう」
「ありがとうございます」
俺たちは王の間を後にし、書庫へ向かった。
王城の地下には広大な書庫が広がっていた。数え切れないほどの本が並び、その中にはこの国の歴史や伝承が詰まっている。
「封印に関する文献はこのあたりにあるはずです」
エリスと共に本を探し始める。
「おっ、これとかそれっぽくね?」
俺は古びた本を取り出した。タイトルは――「封印の秘録」
「これは……封印に関する記録ですね!」
俺たちはすぐにページをめくる。そこには封印の歴史が書かれていた。
――古き神々の力を封じるため、賢者たちは三重の封印を施した。第一の封印は結界、第二の封印は魔力の鎖、そして最後の封印が“鍵”である。
「鍵……?」
俺はその単語に引っかかった。
「勇者様、以前“鍵の者”と呼ばれたことがありましたよね?」
「……そういや、あの時」
封印の間で聞こえた声――『鍵の者、選択を迫られん』
「もしかして、俺が鍵なのか……?」
エリスが驚いた表情を浮かべる。
「もしそうなら、勇者様は封印を開く力を持っているということになります」
「マジかよ……」
俺は額を押さえた。
「じゃあ、あの黒装束の連中が俺を狙ってるのは、俺が封印を開けるかもしれない存在だからってことか?」
「可能性は高いです。だからこそ、勇者様の選択が重要なのかもしれません」
「……」
俺は本を閉じ、大きく息を吐いた。
「とりあえず、まだ決めるには早すぎる。もっと情報が必要だ」
「そうですね」
その時、書庫の奥から足音が聞こえた。
「……誰かいるのか?」
俺は警戒しながら、音の方へ向かう。すると、影の中から一人の人物が現れた。
「やはりここにいたか、勇者殿」
現れたのは、王直属の騎士団長、グレイだった。
「グレイ団長……?」
「王命により、貴殿を迎えに来た」
「迎えに?」
「今すぐ王の間へ戻れとのことだ。急を要する」
「……何があった?」
グレイの表情が険しくなる。
「封印の間の警備が突破された。侵入者が現れたのだ」
「……っ!」
エリスが息を呑む。
「急ぎましょう!」
俺たちはすぐに書庫を飛び出し、封印の間へ向かった。
黒装束の連中が動き出した――俺は剣を握りしめ、走り出した。




