第40話:「赤の月の真実」
王城の尋問室。
俺は、縛り付けられた黒装束の刺客を見下ろしていた。エリスが隣に立ち、冷静に相手の様子を観察している。
「おい、名前は?」
俺が問いかけるも、刺客は沈黙を貫いたままだ。
「…話す気がないなら、それでもいい。だが、お前らが何を企んでいるのか、俺は知るつもりだ」
刺客は一瞬、俺を鋭い目で睨んだ。
「知ったところで、お前には何もできない…」
「試してみる価値はあるさ」
俺は椅子に座り、刺客の顔を正面から見据えた。
「俺は異世界召喚なんてふざけた話には乗る気はねぇ。だがな、俺の身に降りかかったことには、向き合わざるを得ないんだよ」
「…」
沈黙が続く。エリスが静かに口を開いた。
「王城内に裏切り者がいる可能性が高いのは確かです。ですが、あなたたちは何を目的に動いているのですか?」
刺客は苦しげに顔を歪めた後、ぽつりと呟いた。
「……赤の月は、すでに昇っている」
「赤の月?」
俺は眉をひそめた。そんな言葉、初めて聞いた。
「…それは何のことだ?」
「知らないのか…?」
刺客は驚いたように目を見開き、低く笑った。
「勇者でありながら、『赤の月』を知らぬとは…」
「だから、それが何かを聞いてんだよ!」
俺が声を荒げると、刺客は口を閉ざしたまま、視線をそらした。
エリスが静かに続ける。「赤の月とは、何の象徴なのですか?」
「……それを知ることが、お前たちの運命を決めることになる」
「なら、知るしかねぇな」
俺は立ち上がり、エリスに向き直る。
「エリス、王城の記録庫で調べられるか?」
「はい。王家の記録や古文書の中に、何かしらの手がかりがあるかもしれません」
俺は深く息を吐いた。
「…俺は運命なんて信じねぇ。でも、知らねぇまま操られるのはごめんだ」
エリスは小さく微笑み、「では、早速調べに行きましょう」と言った。
刺客を残し、俺たちは王城の記録庫へ向かうことにした。
記録庫の中は静寂に包まれていた。無数の書物が並び、埃のにおいが鼻をつく。エリスが手慣れた様子で古文書をめくり始める。
「『赤の月』…何か関連する記述があるはずです」
俺も片っ端から探し始めた。そして数十分後、エリスがある書物を広げた。
「…これです。『赤の月の夜、王は密約を交わし、封印の鍵を決める』」
「密約…封印…?」
俺はその言葉を繰り返しながら、エリスの指す部分を覗き込んだ。
「どうやら、王国には古くから『赤の月の夜に重要な決断がなされる』という伝承があるようです。そして、『封印』という言葉が記されています」
「封印ってのは…まさか、俺の召喚と関係してんのか?」
「可能性は高いですね」
俺は古文書を握り締めながら、奥歯を噛んだ。
「…つまり、俺はただの召喚された勇者じゃなく、何かの封印と関係している可能性があるってことか」
エリスは神妙な顔で頷いた。「そうかもしれません」
俺は拳を握りしめた。「…ふざけんな。俺は誰かの道具じゃねぇ」
エリスがそっと肩に手を置く。「だからこそ、私たちは真実を探る必要があるのです」
俺は深く息を吐いた。「…分かった。まずは『赤の月』の正体をもっと調べる。そして、この国の裏切り者が何を企んでいるのかをな」
俺たちは改めて決意を固め、記録庫を後にした。




