第39話:「夜襲」
王城の廊下に張り詰めた空気が漂う。目の前には黒装束の刺客。俺とエリスは背中合わせになりながら、相手の出方をうかがっていた。
「おいおい、夜中にこんな歓迎を受けるとはな……俺、勇者なんだけど?」
軽く挑発してみるが、刺客は微動だにしない。
「……勇者、神崎勇斗」
「お、喋ったな。で、俺に何のようだ?」
「・・・」
俺は一瞬だけ息を呑む。今までの黒装束の連中とは違う。あいつらは俺に選択を迫ってきたが、こいつは最初から殺す気で来ている。
「なるほどな……それで、話し合いの余地は?」
「ない!」
「そうか」
俺は構えを取り、えりすも剣を抜く。
「エリスどうする?」
「捕らえるのは難しそうですね」
「だよな」
「それならば、まずは戦いましょう」
エリスの声に迷いはない。俺は小さく頷く。
「仕方ねぇな!」
次の瞬間、刺客が動いた。
「ッ!」
刺客の一撃が俺の頬をかすめる。ギリギリで避けたが、こいつ……速い。
「ハッ!」
エリスが横から斬りかかる。しかし刺客はまるで影のように動き、寸前でかわす。
「クソ、強いな……」
俺も反撃するが、相手は素早く後退し、間合いを取る。
「勇者の力見せてもらおう!」
刺客は冷たい声で言うと再びこちらに向かって来た。
「チッ……!」
俺は剣を構え直す。相手は単純な剣士じゃない。
スピード、技術、どれをとっても一流。普通の兵士とは比較にならない。
「エリス!」
「はい!」
「同時に仕掛けるぞ!」
エリスが頷く。その瞬間、俺たちは左右から同時に攻めた。
「――!」
刺客は一瞬たじろぐが、すぐに動き出す。だが――
「甘い!」
俺はフェイントにかけ、剣を逆手に持ち替えて突きを繰り出す。刺客は躱そうとしたが、エリスが、すかさず追撃を放つ。
「……くっ!」
刺客はついに剣を弾かれ、体勢を崩す。
「今だ!」
俺は一気に踏み込み、剣を振り下ろしたが
「……!」
突然、視界が揺らいだ。
「勇者様、後ろ!」
エリスの声が聞こえた瞬間、俺は反射的に横に飛んだ。次の瞬間、俺が居た場所にもう一人の黒装束が現れ、短剣を突き立てた。
「……もう一人いたのかよ!」
「チッ……仕留め損なったか」
刺客の冷たい声が聞こえた。
「エリス、大丈夫か?」
「はい、でも……二体二になりました。」
「面倒くせぇな……」
俺は息を整える。
「……お前ら、まさか城の中に仲間が居るのか?」
「・・・」
「返事が無いってことは、図星か」
この城の警備はそれなりに厳しいはず。それなのに、こいつらがここまで侵入出来るってことは、内部に協力者が居る可能性が高い。
「ますます話を聞きたくなったな」
俺は剣を握り直した。
「必ず捕らえるぞ、エリス!」
「はい!」
俺たちは再び剣を構え刺客たちと対峙する。
「お前たちの目的は何だ?」
「それを知る必要は無い」
「そうかよ!」
なら力ずくで聞き出すまでだ。
「行くぞ!」
俺は一気に距離を詰める。刺客は迎え撃とうとするが――
「……!」
「遅い!」
エリスが先に動いていた。俺が陽動になり、エリスが奇襲をかける形だ。
「……ぐっ!」
刺客の一人が剣を弾かれバランスを崩す。その隙を見逃さず、俺は柄で相手の腹を撃ち抜いた。
「がっ……!」
刺客が苦悶の声を上げる。
「一人確保」
俺は手際よく相手を拘束する。その時
「……!」
もう一人の刺客が煙玉を投げた。
「チッ、逃げる気か!」
俺とエリスはすぐに動いたが、煙が晴れた時には、もう一人の刺客の姿は消えていた。
「……クソ逃げられたか」
「でも一人は確保しました」
俺たちは地面に倒れた刺客を見下ろした。
「さて……話を聞かせて貰うぜ?」
刺客は黙ったままだったが、俺はニヤリも笑った。
「 俺には、お前の口を開かせる方法がいくつかある」
エリスが少し驚いたように俺を見たが、すぐに理解したようだった。
「まずは、王に報告ですね」
「ああ」
俺たちは拘束した刺客を連れて王のもとへ向かった。
王の間にて勇斗とエリスが今回のことを報告すると。
「……つまり、城内に敵の協力者が居る可能性があると?」
王は俺たちの報告を聞いて深く考え込んだ。
「その者を尋問すれば何か解るかもしれません」
エリスが静かに言う。
「うむ、よかろう」
王は頷いた。
「その者は我が王国の尋問官に引き渡そう」
「お願いします。」
俺は軽く頭を下げる。
「神崎勇斗よ」
王は俺をじっと見つめた。そして――
「お前はどうしたい?」
「・・・」
俺は少し考えた後口を開いた。
「俺はこの世界の真実を知りたい」
「そうか……」
王は静かに頷いた。
「ならばお前の好きにせよ!」
勇斗は、頭を下げ
「有難う御座います」
俺は王の言葉を胸に刻んだ。
黒装束の連中、封印の真実、そして王国内の裏切り者……まだまだ問題は山積みだ。
「やるしかねぇな……」
俺は心の中で呟いた。




