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異世界召喚ラノベに否定的な俺が、召喚されたので逃げることを考える  作者: のほほん


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第38話:「見えざる敵」

夜風が静かに王城を包んでいた。


俺は城の一角にある広い庭園に出て、冷たい空気を吸い込む。今日の訓練も終わり、頭の中には黒装束の連中の言葉が渦巻いていた。


「封印が世界を歪めている……か」


どうして俺にそれを決めさせるんだ。俺はただの一般人だ。戦うためにここに来たわけじゃない。


「……やっぱり逃げたいな」


小さく呟いたその言葉に、自分で苦笑する。


「勇者様?」


不意に声がして振り向くと、エリスがそこに立っていた。


「……まだ起きてたのか」


「ええ、なんとなく眠れなくて」


エリスは俺の隣に立ち、夜空を見上げる。


「星が綺麗ですね」


「ああ……」


俺も夜空を眺めた。異世界の星は地球とは違う形をしているが、不思議と懐かしさを感じる。


「考え事ですか?」


「……まあな」


エリスは俺の横顔をじっと見つめる。「黒装束のこと、気にしていますね?」


「……そりゃな」


俺は軽く頭をかく。「あいつらの言葉が嘘か本当か、それを判断する材料がない。だから、どうしても考えちまう」


エリスは静かに頷いた。「確かに、証拠がない限り、簡単に信じるわけにはいきませんね」


「でも、放っておくわけにもいかねぇ」


俺は大きく息を吐いた。「このままじゃ、いつまでも俺の中で引っかかり続ける」


「……では、調べてみますか?」


「……え?」


「勇者様が納得できるまで、真実を追うのはどうでしょう?」


エリスの真剣な目が俺を捉える。


「おそらく、王城の記録や古い文献の中には、何かしらの情報が残っているはずです」


「……なるほどな」


確かに、俺がただ悩んでいるだけじゃ何も進まない。だったら、自分で動いて答えを探すのもアリかもしれない。


「よし、決まりだな」


俺は頷いた。「まずは王城の記録室に行ってみよう」


「分かりました。では、私もお供します」


エリスが微笑む。こうして、俺たちは真実を探すために動き出した。


王城の奥深くにある記録室は、歴代の王が管理してきた貴重な書物や記録が収められている場所だった。


「こんなところに来たのは初めてだな……」


埃っぽい空気が漂う部屋の中には、古びた書物が並んでいた。


「封印についての記録がどこかにあるはずですが……」


エリスが棚を調べながら呟く。俺も手伝いながら、一冊ずつ確認していく。


「これはどうだ?」


俺は一冊の分厚い本を取り出した。「『封印の起源』……?」


「それは……!」


エリスの目が輝いた。「封印に関する最古の記録の一つです!」


俺たちは急いで本を開いた。


そこには、数百年前の出来事が記されていた。


『かつて、この世界は闇に包まれていた。魔神と呼ばれる存在が世界を支配し、人々は絶望の中にいた。しかし、ある日、異世界より勇者が召喚され、魔神と戦った。』


『勇者は強大な力を持ち、ついに魔神を打ち倒した。しかし、魔神の力は完全に消えたわけではなく、その残滓が世界に混乱をもたらし続けた。』


『そこで、王国の賢者たちは封印を施し、魔神の力を抑え込むことに成功した。その封印こそが、今の世界を支えているのである。』


「……やっぱり、封印は必要だったってことか」


俺は本を閉じながら呟いた。


「ええ、少なくとも、当時の人々はそう信じていたのでしょう」


エリスが慎重に言葉を選ぶ。


「でも……」


俺はある疑問に気づいた。「魔神の力を封印したっていうけど、その封印が世界を歪めている可能性は?」


「……それは」


エリスも少し考え込む。「確かに、その可能性もゼロではありません。しかし……」


「……結局、まだ答えは出ねぇか」


俺はため息をついた。


「ですが、少なくとも私たちは情報を得ました」


エリスは前向きな表情を浮かべる。「これで、黒装束の者たちと対等に話すことができます」


「……だな」


俺は本を棚に戻し、拳を握る。


「次に会った時は、こっちから質問してやるさ」


エリスが微笑む。「ええ、勇者様なら、きっと真実を見つけられます」


「……そうだといいけどな」


俺は小さく笑った。


記録室から戻る途中、俺たちはふと足を止めた。


「……?」


「勇者様、今、何か聞こえました?」


「……ああ」


遠くの廊下から、何かの気配がした。


「……誰かいるのか?」


俺は警戒しながら周囲を見渡す。エリスも剣に手を添えた。


その時――


「……っ!」


突然、影が動いた。


「勇者様、危ない!」


エリスが叫ぶと同時に、俺は反射的に後ろへ飛んだ。


刹那、俺がいた場所に黒い刃が突き刺さる。


「チッ……やっぱり来たか」


闇に紛れて現れたのは、黒装束の刺客だった。


「またお前らかよ……!」


俺は剣を抜き、エリスと背中合わせになる。


「……どうします?」


エリスが小声で尋ねる。


「一度捕らえて、話を聞くのが先だ」


「了解です」


黒装束の刺客が静かに構えた。その動きから察するに、相当の手練れだ。


「勇者様、気をつけてください」


「お前こそな」


こうして、俺たちは突如として襲いかかってきた刺客と対峙することになった――。

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