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異世界召喚ラノベに否定的な俺が、召喚されたので逃げることを考える  作者: のほほん


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第29話: 「王城でのひととき」

双月の森での戦いを終え、王都に戻った俺たちは、王城でしばしの休息を取ることになった。久しぶりに落ち着いた空間に足を踏み入れると、戦闘の緊張が少しだけ和らぐ気がした。


「ふぅ……やっと休めるか」

俺はソファに深く腰掛け、重い剣をそばに置いた。

「こうして座ってるだけで天国みたいに感じるな」


「勇者様、お疲れ様です。少しは体を休めてくださいね」

エリスがテーブルに水を置きながら言った。その表情には、俺への気遣いがはっきりと見て取れる。


「お前も少し休めよ。最近ずっと張り詰めた顔ばっかりしてるじゃねぇか」


「私は大丈夫です。勇者様ほど疲れるようなことはしていませんから」


「はぁ? あれだけ魔法で援護して、疲れてないとか冗談だろ」

俺は眉をひそめて彼女を見た。

「お前、無理してるのバレバレだぞ」


エリスは少し言葉に詰まり、気まずそうに視線を逸らした。

「……無理をしているつもりはありません。ただ、私が倒れるわけにはいかないと思っているだけです」


「だから、無理してるって言ってんだよ。休める時に休まねぇと、いつか本当に倒れるぞ」

俺がそう言うと、エリスは小さくため息をついた。


「勇者様って、意外と人の体調を気にするんですね」


「そりゃ、気にするだろ。お前が倒れたら俺が困るからな」

俺は冗談っぽく笑ってみせた。


「そういうことですか……でも、ありがとうございます」

エリスは少しだけ微笑んだ。


その後、国王から召喚され、謁見の間で今回の報告を行った。


「双月の森での働き、ご苦労だった。封印が守られたことは国にとっても大きな成果だ」

国王は重々しい声でそう言ったが、その顔はどこか険しいままだった。


「でも、奴らはまだ動いてる。どれだけ止めてもまた次が来るだろうな」

俺は率直にそう伝えた。


「うむ。それが問題だ。黒装束の者たちの目的を早急に突き止めねばならない」


宰相が口を挟む。

「とはいえ、彼らの行動範囲は広く、全ての封印を守るのは難しい状況です。勇者様、あなたの力を借りなければならない場面がこれからも続くでしょう」


「わかってるよ。でも、俺だって無限に動けるわけじゃない。次がどこになるのか、もっと情報を集めてくれよ」


「その件に関しては、現在調査隊が各地で動いている。何か掴めばすぐに伝えるつもりだ」

国王が答えると、エリスが一歩前に出た。


「陛下、私たちも次の動きに備えて準備を進めます。ただ、勇者様も疲労が溜まっていますので、少しの間だけでも休息の時間をいただけますか?」


「ふむ……確かに、その通りだな。勇者よ、そなたも体を労わることを忘れぬようにな」


「了解したよ。でも、何かあればすぐ知らせてくれ。休んでる間に奴らが動いたらたまったもんじゃねぇからな」


国王と宰相が頷き、俺たちは謁見の間を後にした。


謁見を終えて、王城内の中庭に出ると、風が心地よく吹いていた。エリスが隣に歩きながら、ふと口を開いた。

「勇者様、少しお散歩でもしてみませんか?」


「散歩?」


「ええ。たまには何も考えずにのんびりする時間も必要だと思います」


「まあ、確かにずっと戦いっぱなしだしな……いいかもな」


俺たちは中庭を歩きながら、花壇や噴水を眺めた。普段なら見向きもしない景色が、どこか落ち着くように感じられた。


「こうして歩いてると、なんだか別の世界にいるみたいだな」俺が呟くと、エリスが小さく笑った。「王城は特別な場所ですからね。少しでも落ち着いていただけるなら嬉しいです」


「お前、いつも気を張ってるから、こういう時くらいもっとリラックスしろよ」


「リラックス、ですか……そうですね。少しだけ、気を抜いてみます」

エリスがそう言って微笑んだその顔は、普段の厳しさが抜けていて、どこか新鮮に見えた。


「おい、それくらいの顔してたほうがいいんじゃないか? いつも怒られてる気分になるんだよ」


「怒っているつもりはありませんけど……そう見えていましたか?」


「たまにな。でも、今のほうがずっといい」


「……そうですか。では、時々リラックスしてみることにします」


俺たちはそんなたわいのない会話を交わしながら、中庭をしばらく歩き続けた。平穏な時間が流れる中、戦いを忘れられる瞬間があることに少しだけ感謝した。


「さて、そろそろ戻るか」

俺は伸びをしながらエリスに言った。

「休みも大事だが、次の準備もしないとな」


「そうですね。でも、今日くらいは少しだけ休んでくださいね」


「わかったよ。ありがとな、エリス」


「どういたしまして、勇者様」


そう言って俺たちは中庭を後にし、それぞれ次の戦いに備えるための準備に取り掛かった。


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