第23話: 「報告と新たな依頼」
王都に戻った俺たちは、すぐに国王へ今回の件を報告するために謁見の間へ向かった。黒装束の男、霧を発生させる魔法陣、そして俺たちを襲ってきた巨大な魔物――その全てを話すと、国王の顔は険しさを増していった。
「またしても黒装束の者たちの暗躍か。そしてその魔法陣を破壊したというのだな?」
「ああ、でも完全に奴らを止めたわけじゃない。やつらの目的はまだ達成されていないんだろうな」
俺は剣を背負い直しながら言った。
「そうでしょうね。彼らはあくまで封印の力を狙っている。そのために各地で動いている可能性があります」エリスが補足すると、宰相が口を挟んできた。
「しかし、魔法陣を破壊したとはいえ、完全に敵を排除したわけではありません。彼らが次に動く場所を特定しなければ、同じことが繰り返されるだけではないですか?」
「それはわかってるさ。でも、どこで次に仕掛けてくるかなんてわからねえんだよ」
俺は少し苛立ちながら答えた。
「勇者様、宰相殿。焦る気持ちはわかりますが、まずは今回の成果を認めるべきです。魔法陣を破壊できたことは大きな前進です」
エリスが冷静に話をまとめる。
国王はしばらく考え込んでから、重々しい口調で言った。
「確かに、勇者とエリスの働きは評価に値する。だが、次の一手を打たねばならぬ。黒装束の者たちがどこで再び動き出すか、それを早急に調査する必要がある」
「どうやって調査するんだ? 手がかりも何もねぇんだぞ」
俺が疑問を投げかけると、宰相が一枚の地図を取り出した。「実は、ある情報が入っているのです。北西にある廃墟となった古い城――『影の城』と呼ばれる場所で、奇妙な現象が起きているとの報告があります。黒い霧が発生し、付近で失踪事件が相次いでいるのです」
「影の城……また厄介そうな場所だな」
俺はため息をつきながら言った。
「勇者様、そこに黒装束の者たちがいる可能性は高いです。次に動く前に、彼らの計画を阻止する必要があります」エリスの言葉には、いつものように真剣な決意が込められていた。
「結局また俺が行くのかよ……」
「勇者よ、そなたはこの国にとって重要な存在だ。その力を貸してほしい」
国王の言葉に、俺は何も言えずに頷いた。
謁見の間を出た後、俺とエリスは城下町を歩いていた。次の任務について話し合おうとしたが、エリスが少し気になる顔をしているのに気づいた。
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
「はい。影の城に関する記録を調べていた時に、少し引っかかることがありました」
「引っかかる?」
「影の城は、かつて封印の研究が行われていた場所だという記録があります。しかも、その研究は異世界の技術や力を利用するものだったと」
「異世界……俺の世界と関係があるってことか?」
「かもしれません。まだ確証はありませんが、もしそうなら勇者様が召喚された理由にも何か関係があるかもしれません」
俺は少し考え込みながら言った。
「俺の召喚と関係があるなら、なおさら放っておけねえな……。行くしかないってことか」
「はい。でも、無理はしないでください。影の城は非常に危険な場所だと聞いています」
「わかってるよ。だが、どうせ逃げられないんだろ?」俺は皮肉っぽく笑いながら答えた。
エリスは少し笑ってから、真剣な顔で言った。
「勇者様がいるから、私たちは戦い続けられるんです。そのことを忘れないでくださいね」
「おいおい、プレッシャーかけるなよ……」
翌朝、俺たちは影の城を目指して出発した。王都を出て荒野を進む中、エリスがふと口を開いた。
「勇者様、昨日からずっと気になっていることがあります」
「何だよ、また厄介な話か?」
「いいえ……もし、この旅の中で何かあった時、私は最後まであなたを守ります。それを伝えておきたかっただけです」
「守る? 逆だろ。お前たちを守るのが俺の役目だ」
「いいえ。勇者様はこの世界の希望なんです。だからこそ、私はあなたを守るために力を尽くします」
その言葉に、俺は何も言い返せなかった。守られる側だなんて思ったことはなかったが、彼女の決意が伝わってきたからだ。
「……ありがとな。でも、俺も簡単にやられるつもりはねえよ」
「それで十分です」
俺たちは短いやりとりを終え、再び馬を走らせた。目的地の影の城――そこに何が待っているのかは、まだわからない。ただ、一歩ずつ前に進むしかないのだ。




