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異世界召喚ラノベに否定的な俺が、召喚されたので逃げることを考える  作者: のほほん


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第21話: 「不穏な影」

静まり返った王都の夜、遠くの空に見えた黒い霧が俺の胸に嫌な予感を呼び起こした。それが何かは分からない。ただ、この世界に来てから感じ続けている「厄介ごと」の匂いが、確かにそこから漂っていた。


「勇者様、何を見ているのですか?」


背後からエリスの声が聞こえた。振り返ると、彼女は少し疲れた表情を浮かべながらも、俺の様子を気にしているようだった。


「遠くの空だ。何か妙な霧が立ち込めてる」


「……黒装束の者たちの仕業かもしれませんね。王都の外でまた何か動きがあるのでしょうか」


「どうだろうな。でも、あれを放っておくとまた面倒なことになる気がする」


「そうですね。報告すれば調査隊を出してくれるかもしれません。ただ、もし緊急事態であれば、私たちが先に動いたほうがいいかもしれませんね」


「俺たちが先にか? また危険な場所に飛び込むってわけかよ……」


俺はため息をつきながら頭をかいたが、エリスの真剣な目を見ていると、反論する気も失せた。


「今夜は休んでください、勇者様。明日には状況を確認しましょう」


そう言うと、エリスは静かに部屋を出て行った。



---


翌朝、俺たちは王都の見張り台に登り、改めて黒い霧の場所を確認した。騎士団の隊長が地図を広げながら説明を始める。


「黒い霧が確認されたのは、王都から東に20キロほど進んだ平原のあたりです。あの辺りには小規模な集落がありますが、最近は怪しい動きの報告が増えています」


「その怪しい動きってのは?」


俺が尋ねると、隊長は険しい顔で答えた。


「魔物の目撃情報が増え、黒装束を着た集団が村を出入りしているという話もあります。また、村人が行方不明になる事件も起きているそうです」


「行方不明……また奴らの仕業か」


エリスが小さく呟く。その目には不安が滲んでいた。


「どうするんだ? すぐに行くのか?」


「はい。少人数で向かうのが良いでしょう。大規模な部隊では目立ちすぎてしまいますし、相手の動きを掴むのが目的です」


俺は少し迷ったが、結局頷いた。


「わかった。とにかく行ってみるしかないんだな」



---


道中、馬を走らせながらエリスが話しかけてきた。


「勇者様、昨日の夜のことですが……気になっていることがあるんです」


「何だよ。俺、何かしたか?」


「いえ、勇者様が遠くの霧を見てすぐに何かを感じ取ったように見えました。それがただの予感だったとしても、何か引っかかることはありませんでしたか?」


「……言われてみりゃ、確かに変な感じはしたな。あの霧を見た時、何かが俺を呼んでるような気がしたんだよ。説明はできないけどな」


「呼んでいる、ですか……。それはもしかすると、封印の力と関係があるのかもしれませんね」


「また封印かよ……」


俺はうんざりした声を出しながらも、頭の片隅でルナの言葉がよぎった。「お前が選択を迫られる」と言われたあの瞬間、俺の中に何かが引っかかっている気がしてならない。


「考えても仕方ねぇな。とりあえず、現場に行って何が起きてるか確かめるしかないだろ」


「はい。そのためにも、気を引き締めていきましょう」



---


目的地に到着した俺たちは、広がる荒れ果てた平原を目にして言葉を失った。かつては人々が生活していたはずの集落は、建物が崩れ落ち、周囲に黒い汚れが広がっている。


「……ここ、本当に人が住んでたのか?」


「少し前までは住んでいたはずです。でも、こんなに荒廃しているなんて……」


エリスが悲しげな声を漏らす中、周囲を警戒していた騎士が叫んだ。


「何かいます! あれを見てください!」


彼が指さした先には、黒い霧に包まれた魔物がうごめいていた。それは人型のようでいて、どこか異形の姿をしている。


「来るぞ!」


俺は剣を抜き、エリスも詠唱を始める。魔物は霧の中から次々と現れ、俺たちを取り囲む形で動き出した。


「くそっ、数が多いな……!」


俺は剣を振るい、魔物の一体を倒すが、すぐに別の魔物が襲いかかってくる。エリスが光の魔法を放ち、騎士たちが奮闘するが、敵の数が減る気配はない。


「勇者様、もっと奥から霧が出ています! あそこが原因かもしれません!」


エリスが指さした先には、霧の中に奇妙な光がちらついているのが見えた。


「……あれかよ。仕方ねぇな、行くぞ!」


俺は敵を蹴散らしながら光の方向に突進した。その先には、小さな魔法陣が描かれ、その中心に黒装束の男が立っていた。


「またお前か!」


「やはり来ましたね、勇者様。これ以上の邪魔は許されませんよ」


黒装束の男は薄く笑いながら、手をかざして新たな魔物を呼び出した。


「……どこまで面倒な奴らだよ!」


剣を構え、俺は魔物に向かって突進した。


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