第14話: 「東の聖域へ」
ルナからの「東の聖域に向かえ」という言葉が頭を離れなかった。それが次の鍵だと言われても、詳細は何も分からない。だが、放置すれば黒装束の連中や、この世界の滅びに繋がるのは明白だった。
(どうするにしても、まずは聖域に行ってみるしかないか……)
俺は王都での報告と許可を終え、東の聖域を目指して再び旅に出ることにした。同行するのはエリスと数人の騎士たち。俺が単独で動こうとしたのを、エリスが「勇者様を一人にはできません」と言って強引についてきたのだ。
---
道中の不穏な空気
「東の聖域って、どんな場所なんだ?」
俺が馬を走らせながら尋ねると、エリスが説明を始めた。
「聖域はこの国でも特別な場所です。古い遺跡が点在していて、異世界と何らかの繋がりがあるとされているんです。そのため、学者や魔法使いが頻繁に訪れていましたが、最近は黒装束の者たちの姿が確認されたと報告されています」
「黒装束の奴らが?」
「あくまで噂ですが……。ですから、現地で何が起きているのか確認する必要があります」
エリスは険しい顔をしながら続ける。
「聖域には強力な魔物が現れることもあります。気を抜かないでくださいね、勇者様」
「わかってるよ」
内心では逃げることを考えながらも、表向きは彼女に同意する俺だった。
---
襲撃
聖域に近づくにつれて、道の雰囲気が一変した。木々はまばらになり、空気が重く冷たい。どこからともなく、不気味な気配が漂ってくる。
「嫌な感じだな……」
その時だった。突然、森の奥から魔物が飛び出してきた。狼のような形をしているが、目は赤く光り、口からは黒い煙が漏れている。
「来たぞ! 構えろ!」
騎士たちが武器を構え、エリスもすぐに詠唱を始める。俺も剣を抜き、周囲を警戒した。
(やれやれ、また戦いかよ……)
魔物は数匹いるが、動きは単純だ。剣聖の力を使えば、一瞬で片付けられる。だが、ここで目立つわけにはいかない。
俺は手加減しながら魔物の一匹を仕留めるふりをし、あえて騎士たちに大半を任せた。エリスの光魔法が炸裂し、最後の魔物が消え去る。
「皆さん、大丈夫ですか?」
エリスが確認を取る中、俺は内心ホッとしていた。
(これくらいなら適当に誤魔化せるな……)
---
聖域への到着
魔物を退けた後、俺たちはついに聖域の入り口にたどり着いた。そこには古い石造りの門がそびえ立ち、その表面には見たことのない文字が彫られている。
「これが……聖域か」
門の奥には霧が立ち込めており、中がどうなっているのか全く見えない。
「この中に何があるか分かりません。皆さん、気を引き締めてください」
エリスが騎士たちに注意を促すと、全員が頷いて武器を構え直した。俺も剣を握り直し、緊張感を抑えながら門をくぐった。
---
聖域の中で
聖域の中は、外とはまるで別世界だった。広がる光の柱、宙に浮かぶ石の階段、不気味に揺れる空間――すべてが現実離れしている。
「……ここ、本当にこの世界か?」
思わず呟く俺に、エリスが頷いた。
「聖域は異世界の影響を強く受けていると聞きます。これほどまでとは思いませんでしたが……」
周囲を警戒しながら進むと、奥に大きな祭壇のような場所が見えてきた。その中心には青白く輝く球体が浮かんでいる。
「これが……?」
エリスが球体に近づこうとした瞬間、不意に空間が揺れた。
「気をつけろ!」
俺が叫ぶと同時に、祭壇の前に黒装束の男が現れた。
「ようやく来たか、勇者様。そして……聖域の力に近づく者たちよ」
その声に、エリスと騎士たちが身構える。
「またお前か!」
俺は剣を抜き、男を睨みつけた。
「ここで何をしている?」
男は静かに笑い、祭壇の球体を指差す。
「この聖域に眠る力こそ、我々が求めるもの。そして、あなたがその力を目覚めさせるための鍵なのです」
「俺が鍵だと?」
「そうだ。この力を使えば、異世界の法則を超えた真の支配が可能となる。さあ、勇者様。あなたの力でこの封印を解いてもらいましょう」
「ふざけるな! 誰がそんなことするか!」
俺が剣を構えると、男は手を叩いて笑った。
「ならば、力づくで協力していただこう」
その言葉と同時に、聖域全体が揺れ、周囲に黒い影が現れ始めた――次の戦いが始まろうとしていた。




